全ての道はロシアに通じるというか、ウクライナに通じるというのか、先週から市場は「ウクライナ情勢一色」です。今朝の段階では、「ウクライナとロシアがベラルーシ国境での交渉に合意」との報道はありましたが、時間等については不明でしたが、どうやら日本時間の本日午後には行われるようです。ただ、ウクライナ情勢に関連するニュースは多く、ロシアの銀行が「SWIFT」から排除されることになったことに伴い、予想されたように通貨ルーブルが急落しています。28日のオフショア取り引きで、ルーブルは対ドルで30%近く急落しています。また、ロシア国民は全土でATMの前に外貨を引き出そうとする人の長い列ができており、「一部銀行では25日引け値を3割余り上回る高値でドルを売却。中には1時間以上並んでいるが、外貨はどこでも消えていて、ルーブルしかないと語る人も多くいた」(ブルームバーグ)と伝えられています。
さらにベラルーシはロシアを支援するため、早ければ28日にウクライナへ派兵する準備を進めているといった報道もあり、また在モスクワ米大使館は、ロシア発の民間航空機の運航停止が増えているとして、米国人にロシアから直ちに退避することを検討すべきだと呼び掛けているようです。ウクライナ、ロシア双方で死傷者の数も増えてきているようで、ウクライナ側では子供14人を含む352人の死亡者が出たと発表しています。間もなく欧州では陽が昇り28日が始まります。ウクライナとロシアの交渉が始まるようですが、だからといって停戦になるかどうかは分かりません。仮に交渉決裂という事態になれば、さらに市場は混乱するはずです。ドル円の値動きはそれでも限定的ですが、週明けのユーロは大きく売られ、、再び1.11台前半まで下落しています。先週末大きく反発したNY株もこのまま上昇するとも思えません。
対ロシアへの経済制裁の一環として、ロシアの銀行を「SWIFT」から外すことが決まりましたが、それに伴って、「FRBの利上げペースにも変化が出て来るのでは」といった見方が浮上しています。ブルームバーグによると、国際決済ネットワークからロシアの銀行を排除する決定は、支払いの遅延や決済網内で巨額の貸し越しを招く可能性があり、米国を始めとする金融当局は再び市場へのドルの供給を迫られる可能性があるという指摘です。FRBが現在行っている超過準備とリバースレポ・ファシリティーズでは不十分で、バランスシート縮小を行わずに、これまでと同様に市場から債券などを購入し資金を供給する必要があるのではないかという見方です。これはあくまでも市場の最悪シナリオの一つであって、3月の会合で政策金利の引き上げを行い、その後に資産縮小を行うという見方が依然としてメインのシナリオです。ただ、市場でドル資金が不足するような事態になれば、この連想からFRBの利上げ観測、少なくとも現時点で5−6回と見られている利上げ回数にも影響が出て来ることは十分あり得ることです。その時は円の上昇圧力となり、ドル円は大きく下げることも予想されます。
今週は、2日と3日にパウエル議長の議会証言があります。議長がウクライナとロシアの戦闘状況を踏まえて、どのような利上げスタンスを見せるのか、非常に注目されます。インフレ阻止を前面に出すような発言を行うようだと、再び株価が下がり金利が上昇してドルのサポート材料になるでしょう。もちろんウクライナ情勢の影響を考慮してハト派姿勢を示すようだと、その反対の動きも予想されます。いずれにしても今週は、ウクライナ情勢の動向プラス、議会証言や雇用統計があり、ボラティリティーはこれまで以上に高まることは必至と見ています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。