東京市場が連休の間に、NY市場で119円50銭まで買われたドル円は、連休明けの東京市場ではさらにドル高が進み、午前中には目先の節目と見られていた120円を付け、120円07銭近辺までドル高が進みました。米長期金利の上昇が続き、金利高に引き寄せられるような形でドル高が進んでいます。米長期金利が2019年5月以来となる2.3%近辺まで上昇する一方、先週末の金融政策決定会合では日銀が引き続き大規模な金融緩和の継続を決めるなど、日米中銀の金融政策の方向性が明らかに異なり、この違いが再び意識され、「円売り・ドル買い」が進んでいるものと思われます。筆者は、「120円前後に行くまでに調整が見られる」といった予想を維持していましたが、なかなか調整らしい調整は見られません。120円07銭をヒットした後、119円85銭近辺まで下げる場面もありましたが「調整」とは言える動きではありませんでした。ここまで来ると、次のターゲットは2016年2月に記録した121円台半ばということになりますが、FRBは先週のFOMCで25ベーシスポイントの利上げを決めましたが、パウエル議長は昨日の講演で5月の会合での50ベーシスポイントの利上げの可能性を排除しませんでした。またFOMCメンバーの中心でも今年残り6回の会合全てで利上げが見込まれるといった予想になっています。やはり金利差は大きく、金利の高い方にお金は流れるという法則は健在といったところでしょうか。
今の市場は、ウクライナ情勢のさらなる悪化や長期化はほとんど材料にしていません。核の使用にも言及したプーチン・ロシアですが、米国は生物・科学兵器使用の可能性に警告を発しています。ウクライナを制圧できないプーチン氏が焦って判断を誤り、戦争がさらにエスカレートする可能性もないとは言えません。そうなると原油価格はさらに上昇し、米国のインフレ圧力が一段高になることが予想されますが、同時に米景気の減速圧力も増します。そして、その先にあるのは、「スタグフレーション」です。米国にとって厳しい経済状況となり、ドル高シナリオにも急ブレーキがかかることが予想されます。
また本日から日本では全ての全都道府県で「まん延防止等重点措置」が解除になりました。しかし、オミクロン株の感染拡大は、ピークから減少したとはいえ、いまだに高水準です。韓国の例もあり、この先再び急拡大するリスクもないとは言えません。まだ「リスク回避の円買い」が再び見直される状況になる可能性があることも、頭の片隅に入れて置きたいと思います。
FOMCが先週で終わり、今週からはメンバーによる講演も活発になります。パウエル議長は昨日の講演で、「同僚と私は、より迅速に行動する必要があるとの結論に達する可能性が十分あり、その場合はそう行動するだろう」と述べています。議長が指摘した様に、パウエル氏の同僚であるメンバーの多くが同じようにタカ派に変わってきたのかどうかを確認することになります。今週は、この水準からドルを買うのも難しいし、かといってドル売りが機能するかどうかの判断も簡単ではなく、なかなか難しい展開です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。