先週末の東京市場では朝方122円43銭前後まで上昇した後、午後には121円18銭までドルが 急落する場面がありました。債券市場で円の金利が0.24%まで上昇したにもかかわらず、日銀が午前の定例金融調節で「指し値オペ」が見送られたことで円買いが強まりました。「指し値オペ」は日銀が「0.25%以上の金利上昇は許容しない」という強い意志表示です。オペを通知しなかったということは「円金利の上昇」につながり、日米金利差の縮小から「ドル売り円買い」といった連想が働き、ドル売りが強まったものです。従って、仮に「指し値オペ」を行えば、円売りが強まるといった状況が連想され、現実にその動きは週明け東京市場の10時半前後に起きています。28日の午前、日銀が0.25%で無制限に債券を買い取る「指し値オペ」を通知したことで円売りが加速し、ドル円は一気に123円台まで上昇しています。正に先週末とは真逆の動きとなり、円売りに「絶好の口実」を与えた格好になりました。
ドル円は3月に入ってから上昇に弾みが付き、3月1日時点では114円台後半〜115円台で推移していたものが123円台までドル高が進み、まだ3月は終わっていませんが、8円も円安が加速したことになります。筆者ももちろんそうですが、誰がこの短期間にこれだけ円安が進むと予想できたでしょう。ドル円は下落時のスピードが速いのは良く知られていますが、上昇局面でこれだけのスピードを見るのは極めて異例だと言えます。やはり「金利」が重要だということでしょうか。
今朝の「アナリストレポート」でも触れましたが、米国のインフレ圧力は非常に強く、もはや「一時的」など という言葉は「死語」になっています。利上げには慎重な姿勢を保っていた多くのFOMCメンバーもここに来て「タカ派」へと、急速にシフトして来ました。そのため市場予想も、ジェフェリーズやゴールドマンが2会合連続の0.5%利上げを予想し、超タカ派の予想と思いきや、シティー・グループはさらに4回会合連続の0.5%利上げの可能性をレポートで発表しています。一方、上でも触れたように日銀の大規模な金融緩和政策は継続されており、現時点では「日米金利差はさらに拡大」するとみられています。ただ、個人的には日本のデフレは既に終焉を迎えており、「インフレへの第一歩」を踏み出したと考えています。いずれ遠くない時期に、ゼロ金利政策を解除する時を迎えると思っています。
今週は31日(木)にPCE(個人消費支出)データが発表されます。すでにデフレータは年率で「6.4%」(前月は6.1%)と予想され、コアデフレータでも「5.5%」(前月は5.2%)と、一段の伸びが予想されています。また1日(金)には恒例の雇用統計の発表があります。ここでは非農業部門雇用者数が前月よりは減少するとみられていますが、失業率の方は前月の「3.8%」よりもさらに改善して「3.7%」と予想されています。FRBは余程のことが無い限り、インフレ阻止を軸足に置き、多少の景気減速は容認する構えのようです。今回上記重要経済指標が予想を上回るようだと、景気減速に対する配慮も不要となるため、利上げ観測がさらに強まることとなり、ドル円のもう一段の上昇要因になります。そうなると、市場が注目している125円が現実のものとなって来るのでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。