ドル円に久しぶりとなる荒っぽい動きが戻ってきました。月足チャートを眺めると、その動きの大きさは歴然としています。1カ月の値動きの大きさを示すローソク足の長さは、2016年11月以来となる大きさです。2016年11月と言えば、あのトランプ氏が戦前の予想を覆してクリントン候補を破り大統領選に勝利した月で、ドル円が100円を割り込んだ「最後の月」でした。そして今年3月は114円台から上昇が始まり、特に先週は日銀による「連続指し値オペ」が円安に拍車をかける格好で125円台までドルが買われ、125円10銭までドル高円安が進みました。ところが、そこからの下落のスピードと下落幅も予想を超えるもので、121円28銭まで巻き戻しが進みました。足もとでは121円30銭前後を3回テストして押し戻され、直ぐに123円台定着とまではいかないものの、ドル再上昇の機会を伺っている状況と見られます。やや気になるのは、多くの投資家が日米金利差の拡大を根拠に再び125円台を窺うとする予想に傾いており、やや楽観的なことが懸念されます。特にこれといった根拠はないものの、気まぐれな相場のアヤとして、このような状況を目にすると、ドルの100%上昇基調に与するわけにはいかないといったところです。
ただ、それでも少なくともこの先1回は125円前後を試す可能性が高いと見られます。先週土曜日の経済新聞に専門家の今後の円相場見通しが紹介されていましたが、三井住友銀行のストラテジストは「今夏にも135円程度まで円安ドル高が進む」との見立てをしています。日米金利差の拡大がその根拠で、2000年以降の日米金利差とドル円の相関を分析すると、1%の金利差拡大で約8円円安が進む傾向があるとし、今後日米金利差は現行の2%から約3.3%まで拡大することをその理由として挙げていました。一方で125円が円の底値で、政府のけん制が強まるとして今後120円台で推移するとの見方も紹介しています。いつもながら専門家の間でも見方が大きく異なり、先行きを予想する難しさは相変わらずです。筆者は前者を支持したいと思いますが、上述のように市場の見方が極端にどちらかに傾くと「注意」が必要と考えています。
今週は6日(水)に発表される3月のFOMC議事録の内容に注目しています。同会合ではこれまでの金融緩和政策を終え、利上げに踏み切った会合です。これまでの慎重な見方を大きく変更し、今後の利上げ姿勢を強めた会合で、そこでの議論が想定されたよりもタカ派寄りであれば、ドル買いに傾く可能性があるからです。
今週も話題の中心はロシア戦争の行方です。ロシアとウクライナは4日にもオンライン形式で協議を再開する見通しですが、ロシア側には妥協する意志が見られず「時間稼ぎ」との見方もあります。また首都キーウ(キエフ)近郊のブチャでは惨殺された複数の民間人の遺体が路上に残されており、西側諸国はロシアを厳しく批判するとともに、制裁を強化することを検討していると伝えられています。まだ終わりの見えないロシアによる戦争ですが、ロシア、ウクライナ双方とも戦争による疲労困憊も極地に達してきているかもしれません。1日も早く銃声を耳にしない日が来ることを望みたいと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。