ドル円は126円台に乗せ、今朝は126円79銭前後までドルが買われ、円が売られています。円は他の主要通貨に対しても安く、ほぼ全面安の様相です。世界で最も取引量が多いユーロドルでもドル高が進み、ユーロは先週木曜日には1.0758と、こちらは2年ぶりのユーロ安を記録しています。ユーロドルでもドル高が一段と進んでいることから、ドル円も上昇しやすい状況が続いているとも言えます。
「週足」チャートでは、先週まで6週連続で「陽線」を示現しており、これは昨年8月にも見られましたが、その時とは「値幅」が全く異なり、今回の様な値幅を伴っての6週連続陽線は、実に2016年10月末から始まった、あの「トランプショック」以来ということになります。円安が急激に進んだことで、鈴木財務大臣は「悪い円安」といった言葉を使って牽制しています。そもそも今回円安が一段と進んだきっかけは、先週の信託銀行の大会で、黒田日銀総裁が「ねばり強く金融緩和政策を続けていく」と発言したことにあり、政府と日銀との為替に対する「温度差」が露呈したことが挙げられます。2%の物価目標達成のためには、日銀にとっては「願ってもない援軍」といったところでしょう。
ただそれでも126円台後半まで上昇したドル円を受け、黒田総裁は18日の国会で、「大きな円安や急激な円安はマイナスが大きくなる」と、ややこれまでとはニュアンスを変えた発言をおこなっています。日米金融当局の金融政策の差に加え、原油価格が再び100ドルを大きく上回って来たこともあり、構造的にも実需のドル買い円売りが今後も増えてきそうです。5月3−4日のFOMCでは0.5ポイントの利上げがほぼ間違いないだけではなく、その後も年内5回の全ての会合で利上げが見込まれ、そのうちの3〜4回は0.25ポイントではなく、大幅な利上げが必要とも見られていいます。ロシア戦争でも円が強含む場面も見られず、こうなるとなかなか円が買われる理由を見つけることは難しい状況で、多くの市場関係者が言及し始めた「130円」が意識されます。仮に130円に近づく水準でさらに強力な口先介入があったら、ドル円が反転する可能性はありますが、それでも流れを変えることは難しいのではないかと思います。
今週は24日(木)の消費者信頼感指数には注目していますが、それ以外は重要な経済指標の発表はありません。一方で、セントルイス連銀総裁など、FOMCメンバーの講演が多くあります。
もっとも、ここについても、多くのメンバーがすでにタカ派寄りに姿勢を変えており、材料にはなりにくいと思われます。
130円まで円安が進むといった声が揃ってきたこともあり、そこまで円安が進むとしても、反転するリスクの水域に入っていることを考えると、ここからは早めの決済も考える必要があると思いますが、どうでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。