「米長期金利の上昇傾向を材料にドル円は底堅い動きが続いています。先週のFOMCでは予想通り政策金利を0.5ポイント引き上げ、FF金利の誘導目標を0.75−1.00%に決めました。パウエル議長は会合後の記者会見で、「インフレはずいぶんと高すぎる。それがもたらしている困難をわれわれは理解しており、インフレを押し下げるべく迅速に行動している」と説明し、「委員会は次の2会合において0.5ポイントの追加利上げを議題にすべきだとの認識が広く見られる」と、5月、6月の会合でも0.5ポイントの大幅利上げの可能性を示唆しました。ここまではタカ派的なバイアスが支配している市場予想と合致していましたが、セントルイス連銀総裁が言及した0.75ポイントの大幅利上げについては、「委員会は積極的に検討していない」と、やや急激な利上げにブレイキを掛ける発言を行い、この発言に反応してドルが売られました。ドル円は128円台半ばまで下げましたが、その後直ぐに反発し、GW明けの9日には再び131円台まで続伸しています。この間、米長期金利は2.94%前後から3.14%まで急上昇しており、ドル円は金利上昇に引っ張られ上昇したことが明らかです。
GW前に131円25銭まで上昇し、2002年4月以来、20年ぶりのドル高水準を記録したドル円でしたが、今週は再びその水準を抜き上昇する可能性が高いと予想されます。次回の会合でも0.5ポイントの大幅利上げが見込まれるFRBに対して、日銀は先の会合で「大規模な金融緩和を粘り強く続ける」とし、さらに市場の憶測を払拭するため「毎日指し値オペ」を実施することも決定しました。これは日本国債が売られ、長期金利が0.25%まで上昇した場合には、それ以上の金利上昇を抑えるため、毎日でも無制限に国債を買い入れるとしたものです。日米金融当局の政策がこれほど異なる以上「悪い円安」という声はあるものの、やはりドルが買われて円が売られるのは止むを得ないと言えます。
こうなると焦点は米国のインフレがどこまで高進し、いつピークを付けるのかという点になります。今週は11日(水)に米4月の消費者物価指数が発表され、前月同様注目されます。事前予想では「8.1%」と予想され、3月の「8.5%」からは鈍化すると見られています。市場予想を超えるようだと、再び株価が下落し、金利上昇にともないドルが続伸するとみています。問題は、予想を下回った場合です。程度にもよりますが、ドルが売られ、ドル円は下値を試すことになろうかと思いますが、下値では買いそびれた投資家が、買い場を探して大きな口を開けて待っていることが予想されます。今回のドル高が3月初旬に始まったとして、ここ2カ月間大きな「調整局面」はありません。3月末にかけて、高値から3円80銭程下げる局面がありましたが、それ以降はほぼ127円を割りこんでいません。今回、仮に予想を下振れる結果が出たとしても、127円前後は非常に重要なサポートになろうかと思います。
さらにドル高に拍車をかけているのがユーロドルの動きです。ユーロドルは4月に下旬に1.0471近辺まで売られ、約5年ぶりとなるドル高ユーロ安を付けています。ユーロは、ロシアへの制裁の一環として天然ガスに加え、ロシア産原油の輸入も禁止され、経済への影響が大きいことからユーロ売りが進んでいます。ユーロドルは1.0350から1.04台後半が大きなサポートとみられ、ここ20年ほど、この水準を底値に反発する動きが続いています。仮に、この水準を下抜けするようだと、ドル円でも一段と円安が進むことになりそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。