ドル円の上値の重い展開が続いています。131円35銭まで上昇してから約4週間が経過しましたが、徐々に上値を切り下げる動きとなり、先週は126円36銭までドルが下落しています。ユーロドルも1.03台半ばまで売られた後急速に値を戻していることから、市場全体ではこれまでのドル高の調整局面に入っているとみられます。FRBが今後も金融引き締めを強化するといった観測も、発表される経済データが予想を下回るケースが多く、事前予想の値と実際に発表された値が、上振れしたか、予想を下回ったかを表す「米エコサプライズ指数」の直近の値は「マイナス0.13」と、昨年9月以来の低水準で、事前予想を下回るケースが多いことを表しています。因みに米景気が好調だった昨年11月には「プラス0.39」まで上昇していました。また先行指標にもその影響は見られ、米景気にブレイキがかかったことに間違いはありません。この辺りのデータを基に、米景気のリセッション入りやスタグフレーションといった言葉も発せられるのだと思われます。米景気の鈍化が進めば、6月、7月の利上げは別として、9月の会合での利上げが見送られるとの見方も出てきました。
日経新聞「ウォール街ラウンドアップ」は、「市場が楽観に傾いたきっかけは25日に発表された5月のFOMC議事要旨だ。0.75%利上げへの言及が皆無だったうえ、『金融緩和を迅速に取り除けば、委員会は年後半には政策効果を評価できるいい位置に立てる』との文言だ」とし、「中立金利まで引き上げた後は様子を見る」というサインとも受け取れると説明しています。言い換えれば、急速に盛り上がったFRBによる金融引き締め観測が「修正」を迫られる岐路に立っているといったところです。ただ、それでも今後FRBが緩やかな利上げペースを維持する姿勢で落ち着くのかどうかは不透明です。今後の経済データを慎重に見極める必要がります。
強力な金融引き締め観測の後退から株価の方も出直ってきました。ダウは6日続伸で、安値からは2000ドル程戻し、3万3000ドルの大台を回復してきました。「株価はまだ底入れしていない」といった見方が市場のコンセンサスのようですが、ブルームバーグは「問題は消えたわけでないのは確かだが、インフレとリセッションの間にちょっとした落としどころを見い出したという楽観論がある」といった、株式トレーディング責任者のコメントを紹介しています。株価がもう一段上昇すれば、リスクオンの流れから円が売られ易いとは思いますが、市場の相場観もやや下方を意識し始めているのも事実で、今週は重要経済指標が多く、その結果次第では明確な方向感が出て来ることもありそうで、期待したいところです。注目は、31日(火)の消費者信頼感指数の速報値と、1日(水)のNY連銀、セントルイス連銀両総裁の発言、そして3日(金)の雇用統計ということになります。やや膠着状態のドル円ですが、今週は再び荒っぽい展開に戻るかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。