先週末に発表された米5月の消費者物価指数の結果を受け、金融市場は再び大きく揺れ動き、いわば「CPIショック」の様相を呈しています。FRBがさらに強力な金融引き締めに追い込まれるといった見方が広がり、ドル高、株安が大きく進んでいます。ドル円は先週末のNY市場ではドル高が進まず、ユーロドルにその地位を明け渡した格好でしたが、週明け月曜日の東京市場では朝方からドル買い円売りが進行し、ドル円はついに135円にワンタッチする水準を記録しています。135円では一旦壁となり、押し返されましたが、それでもドルが大きく売られることはなく、午後には135円台前半まで上昇しています。
株式市場では、先週末のNY株が大きく下げたことを受け、日経平均株価は寄り付きから大幅に下げ、一時は850円程の下げを演じる場面もありました。先週は日米とも株価が出直る動きも見られ、特に今年初めからの上昇局面では「大きく出遅れていた」日本株が底堅い動きを見せ、2万8000円台を回復しましたが、再び振り出しに戻ったようです。やはり世界最大の市場であるNY株式市場の影響力は大きく、ここで大きく下げると、アジア、欧州株の動向をも決定してしまいます。「インフレ率はまだこれから悪化するだろうと私は懸念している。今のペースでいけば、9%になる可能性もある」と、独アリアンツの首席顧問を務めるモハメド・エラリアン氏が予想しているような事態になるとすれば、今年の株式市場には明るい兆しはなく、長いトンネルはまだ続くことになります。
今週は15日(水)にFOMCが開催され、政策金利の0.5ポイント引き上げが予想されますが、市場には0.75ポイントの利上げを見込む向きもあります。FRBとしては、高進するインフレを何としても抑え込まなければなりませんが、それでも来月も会合が開催されることもあり、今回は0.5ポイントの利上げを行い、先ずはその効果を見極めたいとするのではないかと予想しています。仮に0.75ポイントの利上げが決定されれば、再び市場に激震が走ることになるでしょう。また今回0.5ポイントの利上げであれば、7月と9月の会合でそれぞれ0.5ポイントの利上げが正当化されると見込みますが、今後の消費者物価指数の動きと、雇用統計の結果が大きく影響してきます。
政府の松野官房長官はドル円が135円台まで上昇したことについて、「憂慮している。必要な場合には適切な対応を取りたい」とのコメントを残しましたが、市場にはほぼ影響がありません。市場介入に踏み込むには、事前に米国の了解を得る必要があると考えますが、折しも、米財務省は議会に提出する「外国為替報告書」を10日に発表し、貿易相手国に対する為替操作国の認定を見送りましたが、スイスについては「為替操作国・地域に関する認定基準を満たす」と警告しています。日本が単独で市場介入を行えば、「為替操作国」の基準の一部に抵触する可能性があるため、簡単ではありません。仮に政府にその種の動きがあるとすれば、ドル円が140円近辺までさらに上昇した場合かと考えますが、どうでしょう。
135円台前半まで買われたドル円ですが、この上方にはほとんど抵抗帯が見られず、目先は1998年10月に記録した136円90銭前後が意識され、この辺りは146円台まで塊となっており、非常に強い抵抗帯とみられます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。