シーソーのように1日で目まぐるしく上下するドル円は、なかなかその流れに追随するのが難しい展開になっています。日米金利差、あるいは日米の金融政策の違いを考えれば、ドル高が進むのが自然ではありますが、先週の木、金曜日に見られたように1日で4円も下落し、その翌日には同じく4円も上昇するような動きでは、設定したストップロスの水準次第では「往復ビンタ」をされてもおかしくはない状況でした。またドル高を予想するものの、135−140円では警戒感も高まってきており、ドルが上伸した際に付いていけば、「高値掴み」をする恐れもあります。ここは難しいところですが、慎重に対応しながらもドルが下がったところを拾うしかありません。もっとも、そこが難しいと言えば難しいところですが。
先週注目されていたFOMCでは、筆者も予想していましたが、75bpの利上げを決定し、パウエル議長は会見で、「7月会合でも0.5ポイントの利上げか0.75ポイントの選択肢なる」と述べ、引き続き大幅利上げの継続を示唆しました。ただその中でも、「今回の75bpの引き上げが異例に大きな幅であることは明らかであり、この幅が普通になるとは見込んでいない」と述べ、市場の過度な利上げ観測をけん制したことで、株価は反発し、債券も買われたことでドル円は下落しました。しかしそのような発言の効果もわずか1日しか持たず、翌日には再び金利が上昇し、NY株式市場では主要3指数が揃って「年初来安値を更新」する下落を演じています。株価が大幅下落したにもかかわらず、FRBのウォラー理事はさらに7月の会合でも、インフレに余程の変化がない限り、「0.75ポイントの利上げを支持する」考えを示しました。FRBの執行部の一員である理事からこのような発言が出たことに、現在のFRBの置かれている立場、すなわち「インフレ阻止が最大の課題」であるとするFRBの逼迫性が伝ってきます。FOMC会合が終わり、「ブラックアウト」期間が解除になったことで、今週も多くのメンバーの講演が予定されています。「0.75ポイント利上げの合唱」になるのか、注目されます。特に週央にはパウエル議長の議会証言が予定されており、議長がここでより強い口調で0.75ポイントの利上げに言及するかどうかに注目しています。
パウエル議長は急速に利上げを進める過程で「痛みを伴うことは想定内だ」と述べていましたが、痛みは単なる痛みではなく、相当厳しい痛みとなっています。主要指数はすでに直近ピークから20%以上の下落を記録し、暗号資産にいたっては高値から70%程下げたものもあります。懸念されるのは発表される経済指標に、すでに大きく景気の悪化を示すものが急増していることです。エコノミストはこれらのデータを根拠に「リセッション入りする可能性が高い」と判断しています。シティグループが集計している「米エコサプライズ指数」は「マイナス0.285」と、統計が取れる2021年5月以来の低水準を記録しています。この指標は事前予想に対して結果が予想を上回ったか下回ったかを表し、「ゼロ」が、予想通りであったことを示します。足下では発表される多くの指標が「予想を下振れ」したこと示しています。仮にこの先、インフレのピークアウトを示す指標が出てドルが大きく反落することになっても、その先にはさらに経済指標の悪化がドル売りに拍車かける展開もあるかもしれません。果たしてそのような局面は秋以降に見られるのか、あるいは来年に持ち越されるのか、この点も今後の焦点の一つになろうかと思います。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。