先週136円71銭まで買われ、およそ24年ぶりの高値を記録したドル円は、その後やや押し戻されたものの、今朝も135円台を回復するなど、引き続き堅調に推移しています。今月の会合で0.75ポイントという大幅な利上げを決定したパウエル議長は先週の議会証言で、(高インフレを抑制するため)「継続的な利上げが適切になるとわれわれは想定している。過去1年間インフレが上向きのサプライズとなっているのは明白であり、一段のサプライズが待ち受けている可能性もある。よって、われわれは入手するデータと変化する見通しに機敏に対応していく必要がある」と述べ、米経済のソフトランディングについても「非常に困難だ」と述べています。
このように、議長はインフレを抑制するためには、米景気の下振れもやむを得ないとの認識を示しています。FRBは今後も利上げを粛々と継続すると考えるのが妥当かと思われ、この見方がドル円を下支えしているとみられます。実際先週もドルが高値を記録した後、134円台前半まで下げる場面もありましたが、直ぐに反発する展開でした。ドルが大きく売られたら買おうと考えている投資家にとって、なかなかそのチャンスを与えてくれないのが今の相場の動きです。また米長期金利の上昇に引っ張られる傾向のあるドル円でしたが、同金利は6月13日に3.49%まで上昇した後、3.1%台で推移しており、ドル円との相関がやや薄れた印象です。一方で株価の方がやや戻り傾向を見せています。NYダウは14日、15日と連続で年初来安値を更新しましたが、先週末ではそこから1600ドル以上の上昇となっています。かなり売られたことで、2万9800ドル台は値ごろ感から買い戻しも入る水準にあったようです。株価の上昇が「リスクオン」につながることで、今度は低金利の円が売られ、結局ドル円が底堅く推移する結果になっているようです。日米金融政策の差や、日米金利差の拡大が常に材料視される展開です。
今週は29日(水)にECBフォーラムがあり、ここでラガルドECB総裁、パウエルFRB議長、などがパネル討論に参加します。ラガルド総裁については、すでに7月の会合での利上げを示唆しており、焦点は「利上げ幅」に移っています。「0.25ポイントの利上げ」が市場のコンセンサスになっているようですが、0.5ポイントの利上げ予想も根強く、ここでの発言が注目されます。また9月会合での利上げに関する発言もあるかもしれません。ユーロ圏の5月のCPIは「8.1%」でしたが、来週4日(月)に発表される6月のCPIはさらに上昇し「8.5%」と、米国にも引けを取らない高インフレが予想されています。果たして「0.25ポイントの利上げ」という保守的な利上げを決めるか、注目されます。また、このところタカ派姿勢を強めているFRB執行部ですが、パウエル議長もインフレ抑止に並々ならぬ意欲を示していることから「0.75ポイントの利上げ」の可能性が高まるかもしれません。また、9月会合での利上げのヒントもあるかもしれません。
そして30日(木)には、FRBが政策判断に最も利用していると言われる、PCEデフレータなどが発表され、こちらも大きな相場変動要因になります。日本列島はほぼ梅雨明けとみられ、気温が一気に上がってきましたが、相場の方もますます熱くなってきそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。