先週13日、米6月の消費者物価指数(CPI)が「9.1%」と発表され、その後ドル円はさらに上昇して139円39銭前後まで買われました。米国のインフレがピークを付けるどころか、加速している可能性があるとの見方から7月の会合では1ポイントの利上げもあり得るとの観測がドルを押し上げました。また、同日にはニュージーランドとカナダで追加利上げが実施され、「動かない」、あるいは「動けない」日銀との違いがより鮮明となり、円売りが強まった側面もありました。ただ、ドル円はその後138円を割り込む場面もあり、やや軟調に推移しています。いつ大幅な調整が入ってもおかしくはない水準まできたとは言っても、現状は140円テストへの地固めといったところで、そのための準備段階とみていいと思います。
ただ140円に届くとしても、例えば9月会合でも大幅な利上げが必要といった見方が強まるか、あるいは原油価格が120ドルを超える、米長期金利が3%を大きく超えて上昇する、といった支援材料が必要と思われます。その場合、ユーロ円などクロス円でも円安傾向が再び強まり、円全面安の展開が想定されます。
すでに7月に入り、2022年も後半戦に突入しています。年前半は大幅な円安が進み、ほぼ全ての市場関係者にとって想定以上の円安だったと思います。年後半も、今のところ「円安スタート」で始まっています。残り半年で「円高ドル安」に振れる局面はあるのでしょうか?想定される幾つかのケースを考えてみると、先ずは米国のインフレのピークアウトです。米国では今年3月に金融緩和策から引き締めに舵を大きく切り直しました。3月は0.25ポイントの利上げを行い、その後5月に0.5ポイント引き上げ、さらに6月には0.75ポイントの引き上げと、3会合連続で利上げを行い、しかも利上げ幅を拡大させています。それほどインフレの勢いが強かったということですが、1.50ポイントの利上げ幅は決して小さくはありません。実際それ以降の経済データでは、依然好調な労働市場を除けばほぼ鈍化傾向を見せています。6月のCPIは「9.1%」と1981年11月以来となる高水準でしたが、楽観的かもしれませんがこれがピークであるかもしれません。いずれにしても、米国のインフレがピークを付けることが、ドル高が止まる第一歩となり得るでしょう。
第2に、日銀による大規模な金融緩和修正の動きです。長期金利の上限を0.25%に抑えている日銀の政策も、世界的なインフレの流れにいずれ修正を迫られるとの見方が根強くあります。日銀は政策目標の対象である10年国債の利回りを徹底して0.25%以下に抑えているため、5年債などがそれ以上の利回りを付けるなど「ゆがみ」も生じていることから、早晩イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正に動くといった見方です。日銀が修正に動けば、実際の日米金利差がそれほど大きく変わらないとしても、円が急速に値を戻す可能性があるとみています。
ただ仮にこれらの動きがあるとしてもタイミング的には、早くても今年の秋口以降だろうと予想しています。足もとのトレンドが変わらない以上、ドルが売られたところを買うスタンスは続くとみています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。