米国の6月の消費者物価指数(CPI)が9.1%まで上昇していたことから、米インフレはピークを付けるどころか、さらに上昇していることが確認され、7月会合では1.0ポイントの利上げ観測が高まりドル円をさらに押し上げました。ドル円は今月14日には139円39銭まで買われ、いよいよ140円も視野に入ったと思われましたが、1週間のもみ合いを経て、先週末のNYでは反対に円高方向に進み、135円台半ばまで下落しました。相場の難しさと言うか、ドル高一辺の相場観の中やや大きめの「調整局面」と言える動きでした。背景は今週のFOMCでは「さすがに1.0ポイントの利上げは行き過ぎ」とのセンチメントが広がったことが挙げられます。タカ派のウォラーFRB理事と、地区連銀総裁の中でもタカ派の代表格であるセントルイス連銀のブラード総裁が「0.75ポイントの利上げを支持する」ことを表明したことが影響しました。
今週のFOMCではその利上げ幅はほぼ0.75ポイントで決まりかと思いますが、それでも8月には会合がないため、9月以降の利上げスタンスを占う意味でも極めて重要なイベントであることに変わりはありません。注目されるのはパウエル議長の発言内容です。仮に0.75ポイントの利上げを決めた場合でも、その後もインフレ抑制に向けた強い意志を見せ、「FRBは今後のインフレ抑制に向け、できることは全てやる強い意志がある」といったようなコメントを残すようだと、ドルが再び上昇する可能性があります。一方、「9月以降の金融政策については、これまで大幅な利上げを行ってきたので、その効果を見極めたい」といった消極的な発言があるとすれば、ドル円は135円を割り込み、下値を試す可能性があるかもしれません。ただ、パウエル議長も政治的圧力を相当感じていると思われ、安易に楽観的というか、消極的な発言は避けたいはずです。インフレのピークアウトが見られない限り、FRBがインフレの芽を摘むことに全力を注ぐことは想像に難くりません。従って、後述の可能性は低いと予想しています。
サマーズ元財務長官はCNNのテレビ番組で、連邦準備制度(FRB)のインフレ抑制のコミットメントは「心強い」とする一方で、米経済のソフトランディング達成の「公算はとても小さい」との懸念を示しました。サマーズ氏は、「過去このような状況だったケースを見ると、リセッションとなる可能性が非常高い」とし、「高インフレと低失業率が続いた後は、基本的には常にリセッションとなってきた」と説明しています。ドル高基調は今も変わっていないとは思いますが、多くの専門家が指摘しているように、「米景気がリセッション入りする可能性」は決して小さくはありません。「米景気がリセッション入りした」といったことが注目され、これがドル安の引き金を引く可能性には注意したいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。