今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
8月8日 〜 8月14日
ドル/円
132.00〜138.00
ユーロ/円
134.00〜140.00
豪ドル/円
91.50〜95.00

ドル円の上値が重く、ドル高基調も終わったかと思わせるようなセンチメントが続いていましたが、先週末に発表された「7月の雇用統計」が一気にセンチメントを変えてしまいました。この所、結果発表後も大きな動きが見られなかった雇用統計でしたが、今回はその存在感をいかんなく発揮し、さすが重要指標だといった動きを見せました。

非農業部門雇用者数はご承知のように、事前予想の2倍以上で、失業率も3.5%と、いずれも2020年2月のコロナウイルスのパンデミック以前の水準を回復しています。正直、労働市場の好調さは理解していたものの、ここまで雇用者増が伸びるとはサプライズでした。ドル円は重苦しさを跳ね除け、一気に135円台半ばまで上昇しています。一時2.57%台まで低下した米長期金利は先週末には2.86%台まで跳ね上がり、ドル円は素直にこれに反応した格好でした。

9月のFOMCでは0.25ポイントから0.5ポイントの利上げが予想されていましたが、良好な雇用統計を受け、ボウマンFRB理事は0.75ポイントの利上げも排除しない考えを示しています。もちろん今後も発表されるデータ次第ですが、仮に9月でも0.75ポイントの利上げを行うとなると、3会合連続で0.75ポイントという大幅な利上げを行うこととなり、さらにそれは3月以降5会合連続という異例な利上げということにもなります。今回は雇用統計が大幅に上振れした後という流れもあり、市場は一気にタカ派寄りにシフトした印象もあります。冷静に考えれば、現時点では雇用統計の結果だけで0.75ポイントの利上げを決め込むのにはやや無理があろうかと思います。今年3月には一時128ドル台まで急騰したWTI原油価格もピークアウトした感があります。先週は一時87ドル台まで売られ、ピークからの下落幅は41ドル余り(約32%)にもなります。この数字は当然米インフレ率にとっても好材料となり、今週10日(水)に発表される7月のCPIに与える影響は軽微かもしれませんが、その後の影響はそれなりにあろうかと思います。また他の資源価格についても同様なことが言え、9月のFOMCまではまだ2回のCPIの結果が確認できることを考えると、市場は先走り過ぎた可能性もあります。もっとも、何としてもインフレを制御しなければならないFRBとしては、政治的な圧力もあり、今度のCPIが予想を超えるようだと、景気のオーバーキルを考慮しても突き進むしかない、瀬戸際に立たされる可能性もあります。

今週は何と言っても、10日のCPIと翌11日のPPIが注目材料です。CPIは6月の「9.1%」から若干低下していると予想されていますが、値動きが大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは「6.1%」と6月の「5.9%」より上昇しているとみられています。(いずれも前年同月比)結果次第では再び上にも下にも大きく動くことになりますが、今週は132円〜138円程度のレンジと予想します。135円台半ばまで戻したものの、この上は先月下旬に付けた136円台から137円が目先の抵抗帯とみます。その上でも138円台半ばあたりが重要な水準かと思います。円が再び買われる可能性は台湾周辺での中国の出方にもかかっています。ペロシ米下院議長の訪台に対する報復のため、実弾を使った軍事演習を行い、7日には終える予定だった中国人民解放軍は8日も新たな軍事演習を行っており、中国の戦闘機が中国と台湾の分水嶺である「中間線」を超えて台湾領域を飛行するケースが何度か確認されています。専門家によると、中国が台湾にミサイルを発射する可能性はほとんどないもの、偶発的な事故をきっかけにした軍事衝突の可能性はあると指摘しています。かなりきつい言葉で報復を示唆していたこともあり、今週は米インフレ指標だけでなく、台湾情勢からも目が離せません。

今週の注目材料

  • 8/8(月)
    日 6月貿易収支
    日 6月国際収支
    日 7月景気ウオッチャー調査
  • 8/9(火)
    豪 豪7月NAB企業景況感指数
    米 米中間選挙予備選(コネチカット、ミネソタ、バーモント、ウィスコンシン州)
  • 8/10(水)
    豪   豪8月ウエストパック消費者信頼感指数
    中   中国7月消費者物価指数
    中   中国7月生産者物価指数
    トルコ トルコ7月消費者物価指数
    独   独7月消費者物価指数(改定値)
    米   7月消費者物価指数
    米   7月財政収支
    米   エバンス・シカゴ連銀総裁講演
    米   カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
  • 8/11(木)
    日 東京市場休場(山の日)
    欧 OPEC月報
    米 7月生産者物価指数
    米 新規失業保険申請件数
    米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ブルームバーグとのインタビュー
  • 8/12(金)
    欧 ユーロ圏6月鉱工業生産
    英 英4−6月GDP(速報値)
    英 英6月鉱工業生産
    英 英6月貿易収支
    米 7月輸入物価指数
    米 8月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 8/13(土)
  • 8/14(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。