ドル円は先週末のNYで137円台を回復し、137円22銭まで上昇。その流れを引き継ぎ週明けの東京市場では朝方137円40銭前後まで続伸しています。このまま再び139円台までドルが上昇するどうかはまだ不明ですが、ひとまず8月2日に記録した130円台半ばからは大きくドルが買われ、少なくとも現時点ではドル高トレンドは健在ということになります。振り返れば、米GDPが2期連続でマイナス成長を記録し、「テクニカル・リセッション」などと称され、米景気の先行きに「暗雲」が立ち込めたことからドル売りが始まりました。実際、その後に発表された経済指標も軒並み景気に急ブレイキがかかったことを示し、さらに足もとでは最も注目されていた7月の消費者物価指数(CPI)も市場予想を下回り、その後の卸売物価指数(PPI)も予想を下回りました。パウエル議長が7月のFOMC後の会見で、今後利上げペースが鈍化すると述べたことも、ドル下落の布石だったと言えます。
筆者も度々述べているように、この先さらにドル高が進むのか、あるいは140円には届かず再びドルが下落していくのか、なかなか予想がつきにくい状況です。7月のインフレ指標は確かに鈍化していましたが、これが「トレンド」として認識されるには少なくとももう2カ月くらいは継続して鈍化傾向が示されることが必要です。WTI原油価格は100ドルの大台を大きく下回り、一時は85ドル台まで下げてきたことから、米国のガソリン価格も明らかに低下してきました。先週発表された8月のNY連銀製造業景況感は「マイナス31.1」と、前月の「プラス11.1」から42ポイント余りも低下し、2020年4月に次いで2番目に大きな下落幅になっていました。一方で7月の雇用統計が示した「52.8万人」の非農業部門雇用者数の増加はサプライズでした。最近聞いた話ですが、友人の息子が転勤でカリフォルニア州のシリコンバレー勤務となり、赴任した時のことですが、アパートを借りようとしたら90平米で月5000ドル(約68.5万円)だったそうです。また近くのラーメン店ではラーメン1杯が20〜25ドル(約3425円)もしたそうですが、それでも列を作って並んでいたとか。さすがに米国のインフレを身近に感じたと言っていたそうですが、米国の場合には賃金も確実に上昇しており、特にシリコンバレーでは仕事にさえ付けば、何とかインフレに対応できるのではないかといった印象です。
予想が難しい中、今週の焦点は26日のパウエル議長のジャクソンホールでの講演と同日に発表されるPCEデフレータです。今朝の「アナリストレポート」でも紹介したように、パウエル議長はタカ派的な発言を行うのではとの見方が有力のようですが、筆者もインフレ鈍化に対する市場の楽観的な見方に警鐘を鳴らす意味で、タカ派的な発言になるのではと予想しています。FRBとしてはインフレのピークアウトを示すデータを入手するまでは、前のめりになる市場には警戒感を緩めないスタンスであるものと思われます。9月利上げ予想が0.5ポイントに集まるのであれば、ドル円にとって「ニュートラルからややネガティブ」で、0.75ポイントであれば、「買い」といったところでしょう。 ドル高の流れが続く中、ユーロドルの動きも再び注目される状況になってきました。今月中旬にかけて1.03台半ばで戻したユーロドルは再び売られ、1.0022辺りまで売られ、パリティ割れが迫ってきました。ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムは、同国からドイツに至る主要パイプライン「ノルドストリーム」を通じた欧州への天然ガス供給を8月31日から9月2日まで3日間停止すると発表するなど、この冬に向けドイツなど資源エネルギー確保への懸念が広がっています。インフレ率では米国を凌ぐほどの高水準が続く中、景気減速から大幅な利上げには踏み切れないECBは難しい政策運営に迫られています。再びパリティ割れの可能性が高いと予想していますが、ユーロ売りの勢いが増せば、ドル円でも円売りに拍車がかかる可能性があります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。