先週22日(木)の政府日銀による「市場介入」はそれなりに効果があったと思われます。放っておけば、少なくとも146円台には乗せただろうと思われるドル円を力づくで押し下げ、145円台後半から140円35銭近辺まで5円以上も円高方向に持って行きました。ただ連休明け26日(月)の東京市場では午後に144円台前半までドルが買われ、再び上昇傾向を見せており、今後もドル高トレンドは変わらないと市場がみていることを裏付けている動きになっているようです。先週の市場介入については、筆者「本日のアナリストレポート」をご覧ください。
足下のドル高トレンドの最大の要因は言うまでもなく日米金利差にあります。米国ではインフレ高進が止まらず、今年3月以降、全てのFOMC会合で利上げを行ってきました。しかも、3月の会合では0.25ポイントの利上げを小手調べに行いましたが、インフレ率は加速する一方で、5月会合では慌てて0.5ポイントの利上げを実施したように見受けられましたが、時すでに遅く、インフレの勢いを止めることはできませんでした。この時点で大幅な利上げを行い、市場にFRBは断固としてインフレを阻止するといった厳しい姿勢を示せば、あるいは事態は違っていたのかもしれません。後日、パウル議長自身も初動の過ちを認める発言を行っています。その後はご存知の様に、6、7、9月の会合で0.75ポイントの大幅利上げ決定し、現時点では11月、12月会合でも利上げが見込まれる事態になっています。景気を押し下げ、国民にさらなる痛みを伴う政策を推し進めても止まらないインフレ。こうなると、「金融政策だけで、果たしてインフレを止めることができるのか」といった単純な疑問も沸いて来ます。
先週行われた9月のFOMCでは、メンバーの「ドットプロット」も公表されました。驚いたことに、メンバーが予想する年末の政策金利の平均が「4.4%」でした。メンバーの多くが今回の利上げ局面でのターミナル・レートを「4.4%」と見込んでおり、前回6月会合の「3.6%」から大幅に上方修正したことがうかがえました。市場では「複数のターミナルがある国際空港での移動をもじって『ターミナル4からターミナル5へ移動した』といった声も上がった(日経新聞、ウォール街ラウンドアップ)との記事もありました。一方日銀は年内に物価上昇は2〜3%程度まで上昇するが、来年春以降には1.5%程度まで再び低下すると予想している姿勢を崩さず、「金融緩和を当面続けることは全く変わらず、金利を引き上げることはない」(黒田総裁)と繰り返し説明しています。このような日銀の姿勢に、「黒田氏が任期を終える来年4月まで政策変更はない」との見方も浮上しており、政府の円安を阻止するための市場介入と「矛盾」するような部分があるようにも思えます。いずれにしても市場は、再度145円近辺までドルを押し上げ、政府の死守したい水準を探ると共に、再度介入に踏み切るのかどうかを試す動きをしてくると予想します。
「ブラックアウト」期間を終え、今週もFOMCメンバーによる発言が多く予定されています。上述のように、メンバーの多くが政策金利についてはタカ派に傾いていると思え、出て来る言葉はドル買いに作用するケースが多いのではないかとみています。介入でドル円の水準が押し下げられても、ユーロドルとポンドドルで大きくドル高が進めは、ドル円もその影響を受け上昇しやすいことにも留意する必要がありそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。