9月22日の政府日銀による「ドル売り円買い介入」以来、市場にはドル高に対する警戒感が広がり、ドル円は底堅い動きを見せながらも、介入水準であった145円には届かず、足踏み状態でした。しかし相次ぐ市場予想を超える経済指標にやはりドルが上昇し、145円台を超えると上昇に勢いが付き、先週末のNYでは148円86銭までドル高が進みました。一段のドル高に弾みを付けたのが、「9月の消費者物価指数(CPI)」でした。総合CPIは「8.2%」と、市場予想を上回り、中でもコアCPIは「6.6%」と、40年ぶりの高水準でした。また先週末の「10月のミシガン大学消費者マインド」も「59.8」と、半年ぶりの高水準を記録し、結局、米国のインフレのピークアウトを確認するのはさらに先に延びるという見方につながりました。この結果、11月1−2日のFOMC会合では0.75ポイントの利上げが確実となり、12月会合でも大幅な利上げは避けられないといった観測がドルを押し上げ、ドル円は150円も視野に入る水準までドル高が進みました。
ドル円が再び145円台を回復し、前回介入を実施した145円台後半でも2度目の介入がなかったことが、ドル買いに安心感を与えたこともあったように思います。この週末には米ワシントンではG20やIMF、また世界銀行の総会が開催され、日米の金融当局者がコメントを残しております。詳しくは本日17日付けの「今日のアナリストレポート」をご参照頂きたいと思いますが、日米では明らかに足元のドル高に対する認識が異なっています。日本の財務省は「過度の円安には断固とした措置を取る用意がある」としていますが、米財務省は「市場で決まる相場が最良だ」としており、協調介入の可能性はほとんどないことがあらためて明らかになった格好です。11月の中間選挙が迫っている中、何としてもインフレを抑制したいバイデン政権としては、尻に火がついており、ドル高が輸入物価を押し下げることから、当然の対応かと思います。
本日17日も14時現在のドル円は、NYでの148円86銭まで上昇はしないものの、底堅い動きを見せており、上値を試しつついつ介入があるかを探るような動きになっています。先週末の金曜日もそうでしたが、このような静かな取引の中ではなかなか介入のきっかけをつかめないのが実情です。財務省の神田財務官は「一定の水準ではなく、急激な変動が好ましくない」としており、1銭ずつ刻みながら上昇する動きには対応しにくい面もあります。ただそうは言っても、このまま本日も介入がないようなら、150円前後に達する可能性は非常に高いと予想しています。150円というレベルは非常に重要な値位置であるとともに、多くの市場参加が買ったドルを一旦は手放す水準ではないかと考えますが、逆にこの水準を大きく超えるようだと、今度は介入でドルを押し下げてもどこまで円高が進むのか疑問は残ります。米インフレに明確なインフレのピークアウトを示す兆候が出るか、あるいは形勢がやや不利になりつつあるロシアが停戦に臨むといった大きな変化がない限り、ドル高の勢いは止まらないような勢いです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。