先週末のNYに続き、週明け月曜日の朝方8時半過ぎにも、政府は市場介入を行い、ドル円の水準押し下げに躍起になっています。もっとも、いずれも財務省は介入をやったかどうかについては「コメントはしない」と「黙秘」を続けていますが、今朝の動きも、149円71銭前後からわずか7分ほどで145円45銭前後までドルが急落することなど、介入以外には考えられません。当局は、なぜ黙秘を続けているのでしょうか。また、そのメリットは何かあるのでしょうか?一般的には、黙秘をすることで市場が疑心暗鬼になって、過度な円売りを控える効果があるのではないかと言われますが、果たしてそうでしょうか。上でも述べたように、財務省が黙秘を続けても、このような動きは介入以外には考えられないことから、介入を実施したことはバレバレです。むしろ、ここは介入実施の事実をはっきりと宣言し、過度の円安に対する政府の毅然とした強い意志を示した方が得策ではないかと考えます。
今朝のドル円はNY市場の引け値から窓を開け、その後もドル買いの勢いが優勢となり、一時は149円71銭までドル高が進みました。このまま放置していたら恐らく150円台までドルが上昇したと思われたタイミングでドル売り介入を実施し、145円台半ばまでドルを押し下げました。しかし、その後ドル円は再び148円台後半までジリジリとドル高が進んでいます。何もしなければドルが買われる状況は変わっていないとみています。今朝の介入も含め、これで3回の介入を実施した政府・日銀ですが、この3回の介入を通じて分かったことは、
1.東京市場(原則9時〜17時)以外の時間帯でも介入することがある。 2.現時点では150円台には行かせない・・・?? 3.急激に円安が進んだ場合、すかさず介入する準備ができている。
このようなことが汲み取れるのではないかと思っています。
今週は28日(金)に日銀の金融政策決定会合が予定されています。思い返せば、9月22日(金)の決定会合後の黒田総裁の記者会見と同時並行的に円安が進み、145円台後半まで円が売られた時に最初の介入がありました。黒田総裁の「粘り強く大規模な金融緩和策を続けていく」、「金利は引き上げない」といった言葉が介入を誘発する皮肉な結果になりました。今回の会合でも基本的には大きな変化はないと思われますが、9月会合後の発言で上述のような結果につながった経緯もあり、「同じ轍は踏まない」可能性もあります。また、日本の9月の消費者物価指数(CPI)は3%と、日銀の目標である2%を大きく超えていました。大規模な金融緩和策を継続する根拠が徐々に削がれているようにも思えます。しかし、ここで日銀がこれまでの金融政策を大きく変えるとも思えません。長期金利の上限を0.25%に抑えてはいるものの、ベンチマーク以外の10年債では0.25%を上回るものも出てきました。可能性は低いものの、日銀が今回金融政策の「変更」でなく、「修正」を行う可能性があるとの見方もあります。円安が物価上昇をさらに高めていることから、日銀の大規模な金融緩和政策は「最終章にある」といった観測も出始めています。
今回の決定会合の結果と、黒田総裁の発言には前回以上に注意が必要かもしれません。また、「金曜日」という週末にも注意が必要です。土日は市場が休みということもあり、金曜日は最後のポジション調整の日となります。その意味では今回の2回の介入も金曜日でした。思えば、1985年の「プラザ合意」も、前日の金曜日に当時の竹下財務大臣と三重野日銀総裁が極秘にNYに飛び、セントラルパークの前に立つ名門プラザホテルで、主要5カ国蔵相・中央銀行総裁がドル高是正で合意し、翌週月曜日の朝からは怒涛のドル売りが始まったことは記憶に新しいところです。このケースでも前の週の金曜日が最後の調整日となり、ここでドルロングを抱えていた投資家は大きく損を抱えることになりました。今週金曜日は、日銀決定会合があり、翌週1−2日はFOMC、さらに来週金曜日は雇用統計と、やはり金曜日は要注意です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。