先週のドル円は週末こそ上昇に転じましたが、終始上値が重く、木曜日には145円10銭まで押し戻される場面もありました。150円台では政府・日銀による介入警戒感も強くなり、一旦ドルを手放す動きもあったようです。加えて、4.33%台まで上昇した米長期金利が4%を下回る水準まで低下したことがドル売りを加速させた模様です。それでも週末には黒田日銀総裁が会見で、「今すぐ金利引き上げとか出口が来るとは考えていない」と、あらためて述べたことで、ドル円は147円台後半まで反発して越週しています。市場介入がどこまで効果を発揮しているのかわかりませんが、財務省は本日(31日)午後7時に10月の介入実績を発表するとしています。
欧米では物価上昇が収まる気配がなく、政策金利を大幅に引き上げることで景気に急ブレイキをかけるなど、「痛み伴う」政策を実行していますが、日本でもエネルギー価格の上昇や円安の影響から消費者物価指数(CPI)は3%前後まで上昇してきました。日銀の物価上昇目標である2%を大きく超え、今後は欧米並みとは言わないまでも、一段の物価上昇を予想する向きもある中、黒田総裁は会見の中で、「生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率は3%程度になっている。先行きは年末にかけて上昇率を高めた後、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小すると予想する」と述べ、CPIはいずれ2%を割り込むとする予想を、大規模な金融緩和策を維持する根拠にしています。以前にも書きましたが、もし物価上昇率が、日銀が想定する通り2%を割り込むとすれば、その洞察力には脱帽せざるを得ません。日銀がかたくなに金融緩和策を維持することで日米金利差が拡大し、これが、円安が大きく進行した要因の一つとされていますが、日銀はこれを認めようとはせず、現在進行中の円安は「コストプッシュ形の円安」であって、円安が進んだことと金利差との相関にも否定的です。
今週は「FOMC」と「雇用統計」という2大イベントがあります。1−2日のFOMCでは0.75ポイントの利上げは確実で、焦点は「12月会合での利上げ幅」に移っています。12月会合では0.5ポイントの利上げが現時点でのコンセンサスとなっていますが、これが0.25ポイントになるのか、あるいは0.75ポイントなるのかによって相場水準は大きく異なってきます。9月のCPIが上振れした際には、0.75ポイントの利上げ観測が急速に高まりましたが、その後に発表された経済指標が相次いで予想を下回ったことや、SFシスコ連銀のデーリー総裁が「市場で織り込まれているはずの75bpの再利上げとなる可能性はありそうだが、いつまでも75bpだという考えに固執しない方が良いと心から勧めたい」と、市場のタカ派観測をけん制する発言を行ったこともあり、現時点では「0.5ポイントの利上げが適切」となっています。
4日(金)の雇用統計は9月分よりは鈍化すると見込まれています。非農業部門雇用者数は「20万人の増加」と予想され、9月分の「26.1万人」から増加幅が縮小し、失業率も「3.6%」と「0.1」ポイント悪化すると見られています。依然として好調な労働市場ですが、この好調さが維持されているのかどうかがキーになります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。