今年の相場を振り返るには、やや早すぎるかもしれませんが、2022年も残すところあと40日余りです。この40日間の相場展開をどのように予想するかも含めて、今年の相場を考えてみたいと思います。
今年1月3日のドル円は114円98銭で寄り付き、その月の24日の113円48銭が今年のドルの最安値になります。この時点では筆者も含め、多くの市場関係者が「今年はやや円高傾向で推移する」と予想し、「少なくとも年前半は円高傾向」と読んでいました。仮に1年間を通してドルが買われる局面があったとしても、「120〜125円程度」かと、予想していました。この時点で今年、150円を超えるドル高が進むと予想した専門家は、筆者も含めていなかったのではないかと思います。今年は想定外の「ドル高円安」が進んだことになります。その理由として、ロシアによるウクライナ侵攻、サプライチェーンの混乱、あるいは今年春以降のコロナからの脱却による人手不足などが、米国のインフレ率を急激に高め、FRBの引き締め政策が後手に回ったことなどが挙げられます。
「32年ぶりの円安水準を記録」、「政府・日銀、24年ぶりの市場介入に踏み切る」といった言葉が新聞紙上を賑わしました。ドル円は10月21日のNY市場で151円94銭を付け、その直後に介入がありドル急落につながっています。その後タイミングよく、米消費者物価指数(CPI)の下振れや、経済指標の悪化、さらには12月のFOMCでこれまでの大幅利上げの縮小議論を開始するといった観測で、ドル円は先週137円68銭まで売られ、その後は138円〜140円台でもみ合っています。先ず一つ注目したいのが、今回の下落に伴って形勢したチャートの形が、今年8月2日に130円台まで下落した際のそれに非常に似ている点です。この時は「一目均衡表」の「雲の下限」まで売られましたが、そこでしっかりと下落を止められ、その後再びドル高が急速に進みました。先週の137円台半ばまで売られた際も、一時は「雲の下限」を下回りましたが、結局長い下ひげを描き、反転しています。「雲の下限」には交わったものの、下抜けすることはなく140円台まで値を戻しています。仮に前回と同じパターンだとすれば、この後ドル円は150円に向って再び上昇することになります。ドル円を取り巻く環境に目を向けて見ると、8月の際には「VIX指数」は「22.0」だったのに対して、今回は「24.5」とそれほど大きく異なってはいません。しかし米長期金利をみると、8月が「2.75%」で、今回は「3.77%」と、こちらは大きく異なり、ドル円がいかに米長期金利との相関が強いかを物語っており、長期金利の水準が高い分、今回のドル円の水準の方が前回よりも円安になっています。
次に、今回の下落分を「フィボナッチ・リトリースメント」を使って戻りのメドを計算すると、「23.6%戻し」が141円05銭、「38.2%戻し」が143円13銭、そして「半値戻し」は144円81銭と導き出されます。いずれもまだ届いていないことになります。ただ、筆者は今度150円に届くのは、かなりの至難の業ではないかと予想しています。米国のインフレ率がピークを付けた可能性があるからです。今後急激にインフレが収まることはないにしても、今年3月から始まった引き締め政策の効果はじわじわと出始めてきたと思われます。従って、ドル円の急落はないとしても、来春に向けてジリジリと値を下げる展開を予想しています。今年1月のドルの最安値から10月の最高値の上昇幅を同じ手法で計算すると、132円70銭を割り込むと、今年の上昇分の半値を割り込むことになります。あくまでも参考までに。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。