米労働市場は思った以上に強く、今後もFRBにとっては「手ごわい相手」であることは間違いないようです。もちろん、その背景にあるのは「慢性的な人手不足」ではありますが、「11月の雇用統計」では失業率は予想通りだったものの、雇用者数と賃金が予想を超えていました。米金融当局にとっては憂慮すべき状況は続いており、「米金融当局は政策金利のピークの水準金利を引き上げ、より長期にわたってその状態を維持せざるを得ない可能性がある」(ブルームバーグ)ようです。来週13−14日のFOMCでは0.5ポイントの利上げが予想されますが、来年1月31−2月1日の会合でも0.5ポイントの利上げの可能性も浮上してきました。先週の講演でパウエル議長は、「利上げペースを落とす時期は早ければ12月の会合になる可能性がある」と発言したことで、株価が大きく買われ、長期金利が急低下。ドル円は139円手前から135円台まで下げました。この時には、1月会合では0.25ポイントの利上げ観測が急速に高まったものの、わずか2日でその見方も危うくなり、ドル円はそのたびに大きく乱高下しています。133円台半ばまで売られたドル円は雇用統計発表直後には136円をうかがう水準まで反発し、その後134円台前半まで押し戻される動きになっています。
今後もこの様に、経済指標の結果を受け大きく値が変わる可能性がありますが、メインイベントは13日の「11月の消費者物価指数(CPI)」と、その翌日のFOMC後のパウエル議長のコメントです。ドル円の今後の方向性はほぼこの2つの重要なイベントで決まるといっても過言ではありません。足下ではドルの上値が重いのは事実ですが、このセンチメントも、今回の雇用統計に次いで、11月のCPIが再び上昇に転じるようなら、変化を見せる可能性があります。2022年のドルの高値は10月21日に記録した「151円94銭」で決まりかと思います。これまでのドル高の流れが終わったとは思いますが、かといって、「ドル安トレンドに転換した」かどうかは非常に微妙です。日足ではすでに何度も触れていますが、「短期的にはドル安トレンドに転換した」と言えますが、まだ「週足」が転換していないことから、この辺りを慎重に見極める必要があると考えます。足元のドル円は134円台前半で推移していますが、ここから140円方向か、130円方向かと問われれば、個人的には140円方向に組みしたいと思います。その根拠はやはり、米国のフェデラルファンド(FF)金利は、今後も高水準で推移し、利上げの停止までは長い道のりが残っていると予想するからです。もちろん一本調子でドルが値を戻すことはなく、気が付けば「やはり、日米金利差は縮まない」ということに市場に見方が集まるといったイメージです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。