11月の消費者物価指数(CPI)と、今年最後となるFOMC会合を経て、ドル円は134円台まで下げた後、138円台前半まで上昇する場面もありましたが、結局元の水準に戻っています。引き続き今週も、基本レンジは133円−138円台と予想しています。
FOMCではパウエル議長のタカ派寄りの発言があり、その後もNY連銀のウイリアムズ総裁など、FOMCメンバーからも同様な発言があったにもかかわらず、ドル円は上値の重い展開が続いています。1日の値幅はそこそこあるものの、結局上記レンジをどちらにも大きく抜け切れない動きになっています。パウエル議長は、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」と発言し、NY連銀のウイリアムズ総裁も、「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」と、今後もインフレの動向次第では大幅利上げが再燃する可能性があることを示唆しています。
しかしながら、これまでのようにこの様な「ドル高材料」にも明らかに反応しなくなっています。これは、一つには株価が再び下落基調に入り、売られ易い状況になっていることが要因になっていると考えることができそうです。NYダウは9月末に、2万8725ドルの底値を付けた後、11月末には3万4500ドル台まで大きく値を戻しましたが、足元では再び3万3000ドルを割り込む水準まで下落しています。株価の下落によって「リスク回避」の流れが強まり、リスクオンが強まると円が売られ易い状況と真逆の状態になっていると思われます。「リスク回避」が強まると、安全資産の債券が買われ、金利が低下することでドルが売られるといった構図にも振れ易いとも言えます。従って、今年も10日あまりを残すところになりましたが、米株価の行方には注目する必要があります。
今週は明日20日(火)に日銀金融政策決定会合があり、午後には黒田総裁の定例会見があります。政策変更は今回もないと予想されていますが、これまでとは異なり注目度は増しています。共同通信社が、「岸田政権が政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めた」と報じたことで、週明けのオセアニア市場で円高が進む場面がありました。日銀と政府が共同声明を出すことは、大規模金融緩和策の変更につながる可能性があるとの見方からドル売り円買いが進んだものです。黒田総裁の任期は来年4月8日となっており、残すところあと4カ月余りです。そのため、「政策変更はそれ以降になる」との見方が有力で、次期総裁候補には雨宮現副総裁や、中曾前副総裁の名前が挙がっています。また、日銀初の女性総裁候補として翁百合・日本総研理事長の名前も挙がっています。政策変更はないとしても、記者会見では共同通信社が報じた政府との共同声明についての質問も出ると思われますが、その際、どのような回答をするのか、一応注意する必要がありそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。