ドル円の下落基調は変わらず、週明け16日(月)も午前中に127円22銭前後までドル売りが進み、7カ月半ぶりのドル安水準を付けています。背景は米国のインフレ率が鈍化傾向を鮮明にし、FRBの大幅利上げはピークを超え、データ次第では今月末の会合では利上げが見送られるといった「ハト派的」な見方も浮上していることが挙げられます。加えて、注目されている日本の長期金利は本日も日銀が許容する長期金利の上限である「0.5%」を超え、「0.51%」まで上昇したことも挙げられます。日銀は5年超10年以下の国債を5000億円買い入れる臨時の国債買い入れオペを通知しており、「0.5%」の上限を超えさせないようにしていますが、金利先高観は変わっておらず、市場には「今週の金融決定会合で何らかの修正を行う」との根強い観測があり、これが円買いにつながっています。市場の大方の見方は125円を割り込む方向に大きく傾いてはいますが、この動きは日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)の再度の修正を相当織り込んでいるとみています。
ドル円は6日の雇用統計発表直前には134円80銭近辺で推移していたことから、すでに7円以上もの急激なドル安が進んでいます。まだ年明け2週間ほどしか経過していない中でドル高修正が急速に進んでいる状況ですが、ここまで短期間にドル売りが進むと、すでに短期的なオーバーシュートも起きているのではないかと思います。今日の「アナリストレポート」でも触れましたが、昨年1月のドルの最安値からすると、上昇幅の半値戻しはすでに終えて、61.8%戻しの128円17銭をも下回っています。「フィボナッチ・リトレースメント」は、この先ドルがどこまで下がるかを見極める有力な手法ですが、どこを上昇の起点にするかによって当然値幅も異なってきます。2021年1月の102円60銭を起点にすれば、半値戻しは「127円27銭」となり、今日の動きでほぼ達成したと考えられます。またさらに遡って2020年3月の101円18銭を起点にすれば、半値戻しは「126円56銭」と計算できます。ということで、目先の短期的な底値は125−127円のどこかではないと、個人的には予想しています。
今週の焦点は上でも触れたように、17−18日に開催される日銀金融政策決定会合です。昨年の12月までは「ほぼ無風」として、注目度の低かった日銀会合でしたが、12月会合で突然、長期金利の上限を拡大した「黒田ショック」により、無視できないイベントになっています。今回の会合では政策変更はないとみられますが、長期金利の上昇が続いて状況の中、再び「何らかの修正」はあるかもしれません。また、今週もFOMCメンバーによる発言の機会が多くあり、すでに「ハト組」に席替えしたメンバーも3人程いますが、あとどれだけのメンバーが「ハト組」に入ってくるのかも注目です。
また金曜日には12月の全国の消費者物価指数(CPI)も発表されます。すでに東京都のCPIは「4%」と、実に1982年4月以来40年8カ月ぶりの高水準を示していました。全国のCPIが上振れすれば、日銀の政策変更の可能性も浮上してくるかもしれません。いずれにしても今週も波乱の週になりそうです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。