ドル円は日銀の政策運営を巡る報道だけではなく、総裁人事の行方を巡っても動かされる展開が続いています。先週、「次期総裁に雨宮氏」と、日経電子版が報じたことで、予想していた通り順当な人事であったことから、直に金融政策の変更はないといった見方に落ち着いていましたが、一転して「元審議委員の植田氏が新総裁に」というニュースで再び相場が動きました。現職の副総裁が総裁に昇格という流れは、ドル買い材料でしたが、外部からの新総裁となるとその逆の発想からドル売りで反応し、ドル円は一時130円台を割り込みました。ただその後は植田氏の発言等から、これまでの金融政策の変更は当面ないとの見方も浮上し、ドル円は再び131円台に上昇し、本稿執筆時には132円台前半までドルが買われています。「次期日銀総裁に植田氏」との報道を受けドル円は上昇しましたが、日経平均株価は大きく売られ、一時400円安。日本の長期金利も0.5%前後で張り付いていますこちらでは誰が次期総裁になろうとも、円金利の上昇は避けられないとの見方のようです。
結局、ドル円で言えば、円サイドには思ったほどの買い材料はなく、明日発表の米1月のCPIなど、ドルサイドの材料が方向を決める展開が予想されることになります。米1月のCPIは明日の22時30分に発表されますが、ややインフレ率の鈍化傾向が弱まるのではないかといった警戒感が広がっています。総合CPIの予想は「6.2%」と、12月の「6.5%」から減速。コアCPIも「5.5%」と、12月の「5.7%」からは減速しますが、どちらも減速ペースはこれまでより鈍化するとみられています。(いずれも前年同月比)ただ、足元の市場観測は「ひょっとしたら、予想を上回るのではないかと」といった「サプライズ」に身構えている状況です。仮に結果が上記サプライズになるようだと、2月3日に発表された雇用統計の結果と相まってFRB高官の発言がさらにタカ派寄りになることも予想されます。現時点で3月会合の利上げ幅に言及することは時期尚早ではありますが、0.25ポイントの利上げ幅から0.5ポイントの利上げ幅になるといった声も出て来そうです。さらに思った以上に米インフレは粘着性が強く、2%のインフレ目標達成には越えなければならないハードルは相当高いといった見方も出て来る可能性があります。
日銀の新総裁は正式には国会の決議を経て決定されることから、国会日程上も時間的な余裕はないようです。予定では今月24日午前に衆議院で所信聴取が行われ、午後には副総裁候補の2名にも同様な聴取が行われることになっています。バークレーズ証券は、「現状では金融緩和の継続が必要」と述べた植田氏の発言は、「あくまでも現状の見解を述べただけで、2月24日の衆議院で示されるであろう各候補者による、今後の金融政策運営に対する見解を確認する必要がある」と指摘しています。これまで長い間無風だった日銀の政策や当局者の発言が、これからは大きな材料になる可能性が出て来たということです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。