ドル円は先週末の欧州市場で、昨年12月20日以来となる135円台乗せを示現しています。米経済指標が予想外の底堅さを示し、先週発表された1月の消費者物価指数(CPI)では、インフレ率の鈍化が示され、順調に低下してきたインフレ率がこのまま低下し続けるのかどうか、黄色信号が点灯した格好です。FRBが急激な利上げを行ってきたにもかかわらず、依然として好調なのは労働市場だけかと思いきや、小売売上高も底堅く、さらには製造業にも底入れ感が出て来ました。その結果、タカ派のFOMCメンバーの中には、3月会合での0.5ポイント利上げも排除しないといった発言まで出て来ました。
想定していたよりも早いドルの反発ですが、力強い経済指標に伴い、低下傾向を見せていた米長期金利も再び上昇に向かい、さらに相次ぐ地区連銀総裁やFRB幹部のタカ派発言もあり、ドルが買われるといった状況も止むを得ないところでしょう。問題はこの先もドルが上昇を続けるのかどうかという点です。米インフレが踊り場から再度上昇に向かうのかどうかが最大のポイントですが、同時に新しい日銀総裁に就任する植田氏がいつ現行の大規模金融緩和政策の変更、あるいは修正を行うのかも焦点になってきそうです。「植田日銀」が政策の変更に動けば、円の金利が上昇し、日米金利差縮小という観点からドル売り円買いが強まると予想されるからです。
ブルームバーグの最新の調査によると、エコノミストの大半は。植田氏が新総裁に就任直後から金融引き締めの方向に動き出すと予想しています。4月では20%を上回るエコノミストが引き締め方向に動くと予想し、6月でもほぼ同数が政策転換を予想しています。7月末までに金融引き締め方向に動くとする見方では、70%を超えています。ただ、それでも「一気に解除するのは大きなリスクを伴うため、相応に慎重な対応はとる」とみる向きも多く、また一部には「黒田氏が退任前の3月会合で自分でやるかもしれない」といった見方もあり、その場合には、植田氏への「大きなプレゼントになる」といった意見もあるようです。いずれにしても、日銀が近いうちに動くのはかなりの確率であると考えられ、ドル円相場の乱高下を引き起こす要因になるため、全ての日銀会合からも目が離せません。
今週は、FOMCメンバーの発言は当然ですが、加えて22日(水)公表のFOMC議事録(1月31日−2月1日分)の内容にも注意が集まります。0.25ポイントの利上げを決定した会合ですが、パウエル議長が「勝利宣言するのは時期尚早だ」と述べた会合でもあり、想定以上にタカ派の意見が多かったことが明らかになれば、ドル円も上昇する可能性がありそうです。また24日(金)の個人消費支出(PEC)価格指数も注目されます。FRBにとってCPIよりも注目度が高く、ここでもインフレの鈍化傾向が示されるとドル買い材料になるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。