再びドル高が加速しそうな雰囲気になってきました。先週末のNYではドル円が136円台に乗せ、136円52銭まで買われ、ユーロドルも1月6日以来の1.05台前半までドル高が進みました。言うまでもなく、背景は米国の相次ぐ経済指標の上振れ発表と、順調に下がってきたインフレ指標の鈍化にややブレイキがかかってきたことです。
昨年6月に「9.1%」でピークを付けた米インフレ率は12月には「6.5%」まで低下しました。1月は「6.4%」と低下してはいましたが、12月からの鈍化傾向が減速してきました。FRBがより注目していると言われている個人消費支出(PCE)価格指数では、1月のデフレータやコアデフレータが、市場予想を上回っていただけではなく、12月の数字をも上回り、米国のインフレが再び上昇に向かうとの懸念も生じています。週明けのドイツ証券のコメントにも「Yes, inflation has peaked, but inflation is sticky」(そう、インフレはピークを付けた。だが粘着的だ)といった文言が見出しを飾っていました。それまでは、3月会合では0.25ポイントの利上げが行われるものの、その後は大幅に引き上げた利上げの効果を検証するタイミングに入るのではとみられていましたが、足元では3月会合に続き、5月、6月会合でも0.25ポイントの利上げへと、市場の観測も徐々にシフトしているのが現実です。
「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、ドル円の日足チャートではローソク足が雲を上抜けし、ドル高を示唆しています。今後のインフレ率の動向が全てを支配していますが、このまま米インフレが高止まりし、再び上昇に向かうのか、あるいは今回の数字が例外であって、鈍化傾向は変わらないのか、今後のデータをみるしかありません。2月も今週で終わり、週央からは3月に入ります。通常ですと、第1週の金曜日には「雇用統計」の速報値が発表されますが、今回は3月10日(金)になります。ただ今週もFOMCメンバーの発言が多く予定されています。28日(火)にはシカゴ連銀総裁、1日(水)はミネアポリス連銀、2日(木)はウォラー理事、そして3日(金)にはダラス連銀とボウマン理事の発言が予定されており、いずれも現在の局面でFRBがどのような行動を行うべきか、併せて3月会合以降の政策にも触れる可能性がありそうです。特にシカゴ連銀のグールズビー総裁は「ハト派」とみられ、どのような発言を行うのか注目しています。
136円台半ばまで上昇してきたドル円ですが、この先のレジスタンスポイントを確認しておきたいと思います。フィボナッチ・リトリースメントを用いてみると、高値を昨年10月21日の151円94銭とし、安値は今年1月16日の127円22銭とすると、「38.2%戻し」は136円66銭と導き出され、まさに先週末のNYでの高値に近くなります。また週開けの東京市場でも136円55銭まで上昇する場面があり、いずれもこの近辺で押し戻されていることを考えると、上記水準が意識されている可能性があります。そして仮にこの水準が上抜けされた場合、次の「50%戻し」は139円58銭となり、やはり切りのいい140円が壁になりそうです。注意しなければならないのは、昨年とは異なり米経済指標の結果だけではなく、日本の金融政策の行方にも注意が必要だという点です。日本の長期金利は今日も、「0.5%」の上限を超える「0.506%」で張り付いています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。