ドル円は下値を試す展開が続いていたものの、先週20日には130円64銭、23日には130円32銭、そして先週末の東京市場でも一時130円06銭までドル売りが進みましたが、130円割れは辛うじて回避していました。しかしその日の欧州市場では130円をしっかりと割り込み、129円65銭までドル売りが進みました。正確に言えば、「ドル売り」というよりも「円買い」が強まったと言った方が適切な状況です。先週は主要通貨の中でも、円が最も買われたことを見ても分かります。
ユーロ円は139円64銭、ポンド円は158円25銭、そして豪ドル円に至っては、約1年ぶりの安値となる、86円05銭前後まで売られました。リスク回避の円買いが強まった結果かと思われますが、「円全面高」の様相を見せています。本日の「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、「円全面高」の背景は、金融システム不安が完全に払拭できないことから、ドルは買えないし、ユーロも買えないことが背景かと思われますが、加えて、4月には「植田日銀」体制がスタートすることで、夏場くらいまでには最低でもイールドカーブコントロール(YCC)の修正など、金融政策変更の可能性が高いことも挙げられます。言い換えれば、円金利の上昇が見込めることも円を買いやすくしている側面があります。米商品先物取引員会(CFTC)が公表した21日までの1週間の最新データによると、ヘッジファンドは円の売り越しポジションを9カ月ぶりの高水準まで増やしており、その後の円高でポジションを大幅に減らしたとみられます。明日28日(火)公表されるCFTCの数字を見れば、その答えがはっきりしてくると思います。ヘッジファンドは、ドル円の方向を読み違えていたのは明らかで、その巻き戻しやストップロスが130円割れにつながったと思われます。
3月のFOMC会合を終えたことで、今週はやや材料難になるかもしれませんが、株式市場を筆頭に、債券市場でも高いボラティリティーが続いていることから、為替市場でも荒っぽい値動きが続くと考え得ざるを得ません。恐怖指数と呼ばれる「VIX指数」も危険水域の「20」を超えて、足下では「21.74」近辺で推移しています。経済指標では28日(火)発表の、3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数と31日(金)のPCEデータが注目されます。また、先週のFOMCでは足元のインフレ抑制を優先し、0.25ポイントの利上げを決定しました。「利上げ見送り」や、一部には「利下げ」観測もあったなか、敢えてインフレ対策を優先したことの背景、あるいは反対意見などがFOMCメンバーの講演から聞かれるかもしれません。あえて利上げを継続したこともあり、多くの発言は「インフレ率は依然高すぎる。今後状況によっては追加利上げの可能性もある」といったタカ派的な言葉が多く発せられると予想され、これらがドルを支える可能性もありますが、流れは「円買い」であると思います。円売りが再び優勢となるには、少なくとも米国発の金融システム不安が完全に払拭される必要があります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。