先週はドル円がほぼ一貫して上昇した1週間でした。130円台前半から3円以上も上昇し、133円台半ばまでドル高が進みました。実際には「ドル高」というよりも「円安」であった側面が強く、円は対ドルだけではなく対ユーロなど主要通貨に対しても全面安の展開でした。円が特に売られた背景には、シリコンバレー銀行(SVB)、クレディスイスに対する処理がある程度進んだことで、「リスクオフ」が大きく後退したことがあげられます。金融不安や信用不安の高まりから「リスクオフ」が強まり、円が買われましたが、その巻き戻しが起きたというのが先週の動きでした。3月13日には「26.52」まで上昇した「VIX指数」は、先週末には「18.70」まで低下しています。市場参加者のリスクマインドが強まる「20」を下回ったことで、金利の低い円が売られたと言えます。
株式市場は日米ともに堅調に推移しています。5月のFOMCで、引き続き利上げがあるのかどうかについは「五分五分」から、やや「据え置き」観測が優勢になった印象ですが。その割にドル円が堅調に推移しています。これは「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、リスクオフの後退と、今朝の「OPECプラス」の減産情報が影響していると思われます。足元のドル円のトレンドは明確ではありません。先週からの流れはややドル高傾向を示してはいますが、ユーロドルを眺めてみると、明らかに「ドル安」傾向を示しています。1.05台から1.09台へとドルが売られ、ユーロが買われました。ドル円とは真逆の動きとなり、その結果ユーロ円は145円へと大きく上昇しています。
テクニカルチャートでも、見た目ではローソク足が下値を切り上げているのが確認できます。「MACD」ではマックDがシグナルを下から上に抜ける「ゴールデンクロス」を見せてはいますが、依然としてマイナス圏で推移しており、まだ上昇に勢いが付く状況ではありません。そんな中、今週は「3月の雇用統計」の発表です。現時点での予想は、失業率は2月と同じ「3.6%」、非農業部門雇用者数は2月の「26.5万人」から「22.3万人」へとやや鈍化すると予想されています。もっとも、この程度の数字であれば、好調な労働市場に変化はないと判断され、ドル売り材料には結びつきにくいと思われます。同時に、FRBの利上げ見送りにも結びつかないと思われます。ただ毎月のことですが、速報値であるため「ブレやすい」のも事実で、予想通りの数字はなかなか出て来ないと思っておいた方がいいでしょう。要はどちらにブレルのかということです。また毎月、月初に発表されるISM製造業景況指数と翌日に発表される非製造業景況指数も、速報値としての意味合いもあり、注目されます。これらの指標を確認した後には、そろそろトレンドが出て来る可能性もあるとみていますが、依然として、植田日銀体制の発足と米景気のリセッション入りという「円高要因」があることに変りはありません。ドルの底堅い動きが続く中でも、意識しておきたい点です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。