「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、米経済は大幅な連続利上げの影響から住宅市場を中心に指標の悪化が続く状況の中でも、雇用が好調さを維持しています。3月の雇用統計では失業率が先月よりも改善し「3.5%」と、空前の低水準を維持していました。「リセッション入り」の可能性が高いと言われながらも、堅調な雇用が支えになっていると言っても過言ではない状況です。これは逆に言えば、雇用が崩れると、かなりの確率で「リセッション入り」することになるという意味でもあります。
ドル円は、ここ2週間ほどは、概ね130−133円のレンジ相場が続いています。上にも下にも抜け切れない相場展開です。サマーズ元財務長官が言うように、米国の金融引き締めは終盤に近付いているのだとすれば、米金利のこれ以上の大幅な上昇は望みにくくなります。一方、黒田氏は先週末で日銀を去り、今週からは植田日銀が始動します。今月27−28日には就任後最初の「金融政策決定会合」が開催されますが、ここでの政策修正や変更はないとしても、6月、7月の会合では何らかの動きがあるのではないかと予想しています。「何らかの動き」とは、とりもなおさず円金利の上昇につながり、上記のように米金利の上昇が抑えられ、円金利が上昇するとすれば、明確な「円高要因」になると考えます。もちろん、為替は金利差だけで動くものではありませんが、一方で最も大きな「変動要因」であることも、事実です。昨年1年で38円以上も大幅なドル高へと動いたことはそのいい例と言えるでしょう。
今週は12日(水)に3月の消費者物価指数が発表されます。現時点での市場の予想は、総合CPIが前月比で「0.2%」、前年比で「5.1%」と予想されています。いずれも2月よりは上昇率が鈍化しています。またコアCPIでも前月比が「0.4%」、前年比が「5.6%」と予想されており、前年比では2月の「5.5%」から若干の伸びが見込まれています。全体的に見れば、過去6カ月に見られた伸びとほぼ同等となり、FOMCでの「利上げ見送り」を後押しするにはやや力不足の感は否めません。もしこの数字に収まるようなら、5月会合での0.25ポイントの利上げが決められると思われます。その場合、これで利上げがひとまず終了するのかどうかが、次の焦点になります。先週、産油国とOPEC非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」が、突如追加の減産を発表しました。WTI原油価格はその日だけで8%も上昇し、一時は81ドル台まで上昇する場面もありました。「OPECプラス」の盟主であるサウジアラビアは、原油価格の安定で歳入を増やす目的もりますが、米国と敵対する姿勢を見せた側面もあったようです。原油価格が高水準で推移することは、米国のインフレがなかなか鈍化しにくいことにもつながります。米国とサウジとの関係も、今後米国のインフレが終息に向かうのかどうかといった点にも影響を与えることになるかもしれません。今週は、上記CPI以外にも多くのFOMCメンバーの講演が予定されており、これらの発言も相場に影響を与える可能性があります。
週明けのドル円は、先週末のNYで付けたドルの高値である132円38銭を大きく上回るドル高で推移しています。先週末のNYでは株式市場が休場でしたので、雇用統計の結果を消化していません。ドル円が今夜のNYで133円50銭を超えて上昇するようだと、短期的には135円方向を目指す可能性も出くるかもしれません。ただ、それでも上値は重いと認識しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。