ドル円は132−134円のレンジ内でのもみ合いが続いています。強弱入り混じった経済指標が発表される中、どちらかと言えば弱い数字が目立つ展開ですが、それでも先週末の「ミシガン大学消費者マインド」のように、予想を大きく上回った際のドルの買い戻しもなかなかのもので、ドル円の水準を直ぐに元に戻す動きにつながっています。FOMCメンバーの予想する「ドット・チャート」では、今年末のフェデラル・ファンド(FF)・レートの中央値は5.1%となっており、ここから推測すれば、FRBの利上げも「あと1回」ということになります。
米金利がこれ以上大幅に上昇することはないといった観測から、ドル安が進み易い地合いになっています。ユーロドルでは「ドル安ユーロ高」が鮮明で、先週のNYでユーロドルは1.1074まで買われ、2022年3月31日以来となるユーロ高となっています。米金利の打ち止め感が出て来る一方、ユーロ圏ではさらに利上げが続くとの見方が背景になっていると思われますが、円についてはその見方がいまだ通用せず、円は対ユ−ロでは大幅な「円安」が続いており、ユーロ円の上昇が目立っています。円の弱さは、先週10日に行われた植田氏の総裁就任会見移行特に際立っており、植田総裁がこれまで黒田日銀の金融政策を「適正だった」と評価したことが効いていると思われます。ただそれでも植田総裁がYCCを含めた金融政策の修正に着手するとの観測には根強いものがあります。ドイツ証券は最新のレポートで、「金融市場がイールドカーブコントロール(YCC)の早期修正・撤廃期待を持っている理由の一つとして、YCCが有している副作用が挙げられる。特に、国債市場の機能低下は、債券市場サーベイの結果を見れば明らかである」と指摘し、さらに日銀が近い将来YCCの修正を検討し始めたとしても、「ターゲットの変更はサプライズを伴ったものにならざるを得ない。これは、コミットメントに対する日銀の信頼を低下させるであろう」と、債券市場の機能低下以上の問題を含んでいることを指摘しています。多くのエコノミストの予想は、日銀は今夏までには修正に踏み切るとういうものになっています。
今週は大きな材料もなく、比較的落ち着いた動きになろうかと思います。米企業の決算発表が引き続きあるため、株式市場発の動きが見られるかもしれません。また引き続き、FOMCメンバーによる発言の機会も多くあります。これにつきましては、先週のウォラーFRB理事に見られたように、基本的には「タカ派寄り」の内容が想定されます。「インフレ率は明らかに鈍化傾向を示してはいるが、依然としてFRBの目標である2%への道のりは長い」というのが、メンバーの共通した認識だろうと思います。その中でも一部のメンバーでは、急激な利上げは避けるべきだといった認識に変ってきた地区連銀総裁も出てきましたが、まだ少数であって、そういった認識を広く共有するには至っていません。
週明けの東京市場ではドル買いが続き、一時134円台に乗せる場面もありました。134円台半ばをしっかりと超えることが出来れば、もう一段ドルが上昇する余地もありそうですが、まだそれで「上昇トレンド入りした」とは判断できないと考えます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。