先週発表された日本の「3月の消費者物価指数(CPI)」は前年同月比で3.2%でした。1月の4.3%からは低下傾向を示してはいるものの、依然高水準です。ただ、日銀はこの先、CPIは1.5%程度まで低下するという見方を依然として維持していますが、今週末の金融政策決定会合に向け「日銀は2023年度の前年度比上昇率の見通しを引き上げる検討に入った」と、23日付けの日経新聞が報じています。ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー価格の高騰が続いていることから、決定会合後に発表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で1月時点の見直しを検討しているとのことです。今回の会合では政策の修正・変更はないとみられていますが、6月、7月会合では何らかの修正が行われる可能性が高いと考えた方がいいように思います。この辺りも含めて、植田新総裁にとっては初の会合、さらに初の記者会見となるため今週末の会合の注目度は高いと言えます。
日銀の決定会合を皮切りにFOMC、ECB理事会と日本のGW中に重要イベントが相次ぎます。GW中は、日本が休場であるため投機筋もドル円を仕掛け易いという状況があります。今から10年ほど前、GW期間中にドル円が大きく円高方向に動き、多くの強制ロスカットが発生したことがあります。市場参加者が少ないことから仕掛け易いということですが、特に「円高方向」には値がとびやすい傾向があります。それは、日本の個人投資家の多くが「ドルロング」にポジションを傾けていることから、ドル高方向では「利食いのチャンス」を提供することに終わる一方、円高方向では、水準をある程度切り下げれば「損切が発生する」ことを彼らも熟知していることがあると考えます。ある一定の水準を切れば、ロスカットが発生し、ロスカットが執行されれば、反対売買がなされ相場がさらに下落する可能性があるからです。投機的な相場の動きに巻き込まれないためにも、ポジションの縮小や口座資金に余裕を持たせることが肝要になります。もっとも、投機筋といえでも「ドル買い材料」が出る中、ドル売りを仕掛ける訳には行かず、あくまでも市場のモメンタム(勢い)に沿った形で行うと考えられます。従って、何らかのドル売り材料が出た際には注意が必要だと言えます。
テクニカルでは、週明け月曜日もドル円が134円台半ばまで上昇したことで、いわゆる「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を上抜けした形状を描いています。昨年10月21日の151円94銭を起点として、次のドルの天井である137円92銭(3月8日)を結んだレジスタンス・ラインと、1月16日に記録した127円21銭と3月24日の129円64銭を結んだサポート・ラインを右方向に収斂させた三角形を上抜けした格好になっています。チャートを見る限り、ドル高を示唆しているようには見えますが、どうでしょう。例年のGWよりは相場が動くと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。