今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
5月8日 〜 5月14日
ドル/円
133.00〜137.00
ユーロ/円
145.00〜150.00
豪ドル/円
90.00〜93.00

大型連休中のドル円は137円78銭から133円74銭まで4円ほど下げ、結局元の鞘に戻ったことになります。一時は「三角保ち合い」を上抜けし、重要なレジスタンス・ラインでもある日足の「120日線」や「200日線」も上抜けしましたが、3日のFOMCを境に円買いが加速し、ドル円は上昇傾向を見せる中、上値も重い印象を残す結果になっています。重要レジスタンスをこなしての上昇であったことから、まだ上値テストの可能性は残っていると思いますが、次は3月8日の137円92銭という高値が意識され、137円台半ばから138円が重要なゾーンになってくると見ています。ここを抜けるようだと140円が視野に入って来るかもしれません。FOMC後にドルが売られたのは、声明文で「追加の政策措置が適切」といった、前回の文言が外され、パウエル議長の会見でも、0.25%ポイントの利上げは決められましたが、「Dovish Hike」(ハト派的な利上げ)と受け止められたことにもあります。また、NY株式市場で株価が大きく下げ、「リスクオフ」の流れが強まったことも円買いを促した要因と見られます。先週末の雇用統計では、労働市場の強さは不変でしたが、それでも3月分が大幅に下方修正されたことで、4月分の想定を超える雇用者増は「セットオフ」され、直近6カ月の雇用者の伸びを見ると、わずかですが鈍化していることが確認されます。ひょっとしたら「異常に力強い雇用」にも、そろそろ鈍化の兆しが定着してきたのかもしれません。

2大イベントが終わり、市場は次の焦点である6月のFOMC会合に移っています。パウエル議長は先週末の会見で、これまでの大幅な利上げで、金融引き締めは十分な水準かを問われて「見極めているところだ」と明確な返答を避けていました。さらなる追加利上げについては、ややハードルが上がっている印象ですが、基本的には「Data Independent」(データ次第)であることは間違いありません。今週10日(水)に発表される4月のCPIが極めて大きな鍵を握っています。ここでインフレが再燃しているようだと、6月会合での0.25ポイントの利上げ観測が一気に高まり、ドル円も再び137円台をテストする可能性が高まります。一方、足元の金融不安は完全に消えていないことから、インフレ率の鈍化傾向が確認できれば、6月会合での据え置きも十分考えられます。パウエル議長としても後者のシナリオを願っているに違いありません。

議長の心の中にはここ2カ月で米地銀3行が破綻したことに対して、忸怩たる思いがあるのでしょう。インフレが落ち着きさえすれば、利上げを一旦停止し、金融不安払拭に全力を傾注できるのですが。FRBの苦悩が続きます。

ドル円が底堅い動きを見せているのには幾つかの理由が考えられます。構造的なドル買い需要に加え、根強く、粘着性のある米インフレが思ったほど鋭角的に下げないこと、さらに円サイドを見れば、植田日銀の想定以上のハト派姿勢が加わります。日銀がYCCの修正に一歩でも踏み出せば、かなりの円高旋風が吹き荒れると予想しています。そのためには、急激な円安の進行や、主要国の大幅な追加利上げ、さらには日本のインフレが、日銀が想定する以上に進む、といったことが考えられます。いずれもまだ時間を要することになりそうです。

今週の注目材料

  • 5/8(月)
    豪 豪4月NAB企業景況感指数
    豪 豪3月住宅建設許可件数
    独 独3月鉱工業生産
  • 5/9(火)
    豪 豪5月ウエストパック消費者信頼感指数
    中 中国 4月貿易収支
  • 5/10(水)
    日 3月景気先行指数(CI)(速報値)
    独 独4月消費者物価指数(改定値)
    米 4月消費者物価指数
    米 4月財政収支
  • 5/11(木)
    日  3月国際収支・貿易収支
    日  4月景気ウオッチャー調査
    中  中国4月消費者物価指数
    中  中国4月生産者物価指数
    中東 OPEC月報
    英  英1−3月期GDP(速報値)
    英  英3月鉱工業生産
    英  英3月貿易収支
    英  BOE金融政策発表
    英  BOE金融政策委員会(MPC)議事録
    米  新規失業保険申請件数
    米  4月生産者物価指数
  • 5/12(金)
    米 4月輸入物価指数
    米 4月輸出物価指数
    米 5月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
    米 ジェファーソン・FRB理事とセントルイス連銀総裁、パネル討論会に参加
  • 5/13(土)
  • 5/14(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。