先週末、総務省は4月の全国消費者物価指数(CPI)を発表しました。総合CPIは「3.5%」と、3月の「3.2%」から上昇幅を拡大し、さらに生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIでは「4.1%」と、3月の「3.8%」から一段と騰勢をと強めていました。前月比で上昇幅が拡大するのは、これで11カ月連続ということになります。人件費や物流費、さらには材料費そのものも上がっており、既往の物価上昇局面と比較すると高い『粘着性』を示すと予想され、バークレーズ証券は、「今回の結果等を踏まえ、23−24年度のCPI上昇率(コアベース)を2.6%へと上方修正する」とコメントしていました。米国ほどではないとしても、何か米国の後追いをしているような状況になってきた印象です。この傾向がまだ続くのか、26日(金)に発表される「5月東京都区部消費者物価指数」が注目されます。
「G7広島サミット」での主役の座をウクライナのゼレンスキー大統領に取って代わられた印象のバイデン大統領は、サミット終了後直ちに帰国の途に就いています。それもそのはず、目の前の債務上限問題の方が自身にとっても、あるいは世界経済にとってもより重要な課題であることは論を待たないはずです。大統領自身、「米国はこれまでデフォルトの経験はないし、これからもない」と明言していたこともあり何としても最悪の事態は避けなければならない状況です。大統領はサミット終了後、日本をたつ前の記者会見で、「私は歳出削減を提案した。今度は共和党が要求を修正する番だ」と話し、さらにヘルスケア、教育予算を削減する一方、「富裕層の優遇税制措置と化石燃料・製薬業界を守る案には同意しない」とも述べており、これらに関してマッカーシー下院議長らがどこまで歩み寄ることが出来るかが焦点になりそうです。米財務省からは逐次資金の状況報告を受けているイエレン財務長官は、「6月15日まで支払い履行を続ける確率は極めて低い」との認識を示しています。
市場の関心は、6月会合での利上げの有無よりも、再び債務上限問題が上位に踊り出た格好です。イエレン財務長官が警告したように、6月1日に「Xデー」が来るようだと、利上げの可能性などは吹き飛んでしまうと思われるからです。リスク回避が進み、株と債券が大きく売られ、ドル円では「リスク回避の円買い」の可能性があるものの、米金利が大きく上昇することに引っ張れる、「ドル高円安」が進む可能性もないとは言えません。
筆者は依然としてデフォルトにはならないと考えていますが、市場ではオプションなどを使って「Xデー」に備える動きも出ているようです。いずれにしても、本日にはバイデン大統領とマッカーシー下院議長の協議が行われる可能性もあり、今週が「ヤマ場」になりそうな気配です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。