今週の相場は大きく動く可能性が多いにありそうです。「中銀ウィーク」とも言えるほど、主要中銀の金融政策発表が相次ぎます。まず、13−14日にFOMCがあります。現時点での予想は、「今回は利上げ見送り」がコンセンサスになりつつあるようです。個人的には早くから「据え置き」を予想していましたが、市場の観測は、経済指標の発表やFOMCメンバーの発言に一喜一憂しながら「0.25ポイントの利上げ」と、「利上げ据え置き」観測に何度も振れながら、結局足元では「据え置き」に収斂してきた形です。ただ、それでも今日の「アナリストレポート」でも触れましたが、会合後のパウエル議長の発言は「タカ派姿勢」を強めるものと見ています。
仮に「5月の消費者物価指数(CPI)」が事前予想通りであったとしても、FRBの物価目標からは倍以上のインフレ率は容認できず、またハト派寄りの発言であれば、先走る市場は「利下げ」のタイミングを探る動きを見せる可能性もあることから、「けん制する」という意味も含めて、タカ派寄りの発言を行うと予想しています。5月のCPI速報値は、総合で「4.1%」、コアで「5.2%」(いずれも前年同月比)と予想されており、昨年6月のピークからは、スピードはともかくとして伸びは着実に減速しています。もちろん結果次第では、ドル円は上にも下にも大きく動く可能性があります。ただ個人的には市場予想よりも改善していた結果が出た場合の方が、より市場にはインパクトが強く、反応も大きいのではないかと予想しています。市場全体では、ドルロングに傾いているのではないかと思うからです。
15日(木)にはECBの理事会があります。今回も政策金利は0.25ポイント引き上げられると予想されます。ラガルドECB総裁はこれまで何度も「物価圧力は依然強い」と繰り返し発言しており、また、利上げの累積的効果がまだ全て実体化していない中、「基調的なインフレがピークに達したことを示す明確な証拠は見られない」と述べています。また政策委員会のメンバーである、ナーゲル・ドイツ連銀総裁も講演で、「現在の状況を踏まえれば、複数回の利上げはまだ必要だ」と発言しています。ここでもラガルド総裁は、タカ派寄りの発言を行うのではないかとみています。そして16日(金)には日銀決定会合があります。これまでの植田日銀総裁の国会での発言を聞く限り、今回の会合での政策変更や修正は想定できません。日本の4月のCPIは、総合で「3.5%」(前年同月比)と、日銀目標の2%を大きく超えてはいますが、植田総裁は国会の答弁で、「持続的、安定的に目標には届いていない」と述べており、「今年後半には2%を割り込む」との予想を堅持しています。このように考えると、今回の会合ではほぼ無風ではないかと思われます。
NY市場では株価も総じて戻り基調です。恐怖指数の「VIX指数」も危険水域の「20」を大きく下回る水準で推移しています。一方で、ヘッジファンドなど投資家は、「まだ安心するにはほど遠い」と警戒感を緩めてはいません。今後まだ波乱含みだということでしょう。ドル円は上値が141円前後、下値が137円程度と、上下とも壁になりつつあります。まずは、どちらの「壁」をブレイクするのか、その兆候が見られるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。