円の安さが際立っています。先週のNYでは昨年11月下旬以来となる141円91銭まで円安が進み、週明け東京市場でも一時141円97銭までドルが上昇し、142円に迫る水準まで円安が進んでいます。円は他の主要通貨に対してはさらに年単位ぶりの円安が進み、ユーロ円は14年9カ月ぶりの円安を付け、スイス円に至っては1979年代まで遡る必要があるほど、円安が進んでいます。今や、主要通貨の中では円が「最弱通貨」になっています。
最大の要因は、やはり各国中銀の金融政策のスタンスの違いという事になります。FRBは今回の6月会合では利上げ見送りを決定しましたが、7月会合では再び利上げを行う可能性は残しており、BOC、RBA、ECBは揃って追加利上げを実施しました。FRBにしても、FOMCメンバーはこぞってタカ派寄りの発言を繰り返しており、今週予定されている地区連銀総裁などの発言も同様な内容が予想されます。FRBの基本スタンスも、結局は2%の物価目標が見込めるまでは、インフレ退治の手綱は緩めないといった姿勢です。
一方、日銀は2%に物価上昇が、持続的、安定的に推移する見込みがたつまでは現行の大規模緩和を継続する姿勢がでることは、先週末の会合とその後の植田総裁の発言からも、「確認できた」ということで円売りが加速した格好です。ただ、個人的には今回の植田総裁の発言にあった、YCC修正は、「ある程度のサプライズはやむを得ない」との言葉に、注意が必要と感じています。金融政策の変更、修正には極めて慎重な姿勢を維持しながらも、必要であれば直ちに実施するといったメッセージが込められているように思えます。昨年12月に、長期金利の上限をそれまでの0.25%から0.5%に変更したサプライズが、どこかの時点で再び見られるかもしれません。もっとも、そのサプライズの要件になり得るのは、日本のインフレの高止まりと急激な円安の進行です。140円台で財務省、金融庁、日銀による「三者会合」が実施されました。すでにその時の水準を上回る円安が進行していますが、現行水準から145円台のどこかで、再び同様な会合が開かれる可能性はあると予想しています。注意が必様な水準に入ったということでしょう。
ここ10年程で最悪とも言われる米中関係に、トンネルを抜け、明るい兆しが見える可能性が出て来たのか、ブリンケン国務長官の訪中が極めて重要な意味合いを持っています。18日に訪中したブリンケン国務長官は、先ず中国の秦剛外相と7時間半にわたる会談を行いましたが、その際、秦外相がブリンケン氏を迎えた時、秦外相の方から先に右手を出し、握手を求めたことが話題になっています。ブリンケン氏は先に相手から握手を求められることを予期していなかったのか、映像を見る限りは慌てて右手を出して答えたようにも見えましたが、この秦外相が先に握手と求めたという姿勢が今回の会談の先行きを示唆しているようも思えました。ブリンケン氏は、この後、中国外交トップの王毅共産党政治局員とも会談を行い、19日には習近平国家主席との会談にも期待が持てそうな雰囲気になっています。中国の国営メディアも、ブリンケン氏の訪中を大きく取り扱っており、明日習氏との会談があれば、いずれか近いうちにバイデン大統領との首脳会談が実現するかもしれません。
今週は、パウエル議長の議会証言と、FOMCメンバーによる講演の内容に左右される展開が予想されます。基本は上でも述べたように、タカ派寄りの発言があろうかと思いますが、日米ともに堅調な株価の動きにも注意したいところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。