今週のレンジ予想[毎週月曜日 更新]

今週のレンジ予想
7月10日 〜 7月16日
ドル/円
140.60〜145.50
ユーロ/円
152.00〜158.00
豪ドル/円
93.00〜97.50

6月のADP雇用者数が市場予想の2倍を超える結果に、ドル円は144円台半ばまで反発したものの、先週末金曜日の雇用統計では、今度は雇用者数が予想を下回ったことで、ドル売りが加速し、久しぶりに142円07銭まで落とされました。賃金は依然として底堅い動きを見せているため、まだ本格的な雇用への逆風の気配はありませんが、目先、145円台はやや重くなったと感じてきているのは、多くの市場参加者の共通した認識かと思われます。一方で、ここからもう一段ドルが売られ140円を割り込むような事態になると、昨年10月以降のドル急落を思い起こさせます。ドル円は市場介入があったとはいえ、151円94銭から127円台前半までわずか3カ月強で24円弱のドル安円高が進みました。ドルが売られる際のスピードの速さは相変わらずでした。

ドル円が140円台を割り込むかどうかは今後のデータ次第ですが、今週は早速12日(水)に6月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。ここで、140円割れを試すのか、あるいは再び145円を目指すのか、方向性が見て取れる可能性がありそうです。市場予想は、総合CPIでは「前月比では」5月よりも上昇していると見られますが、「前年比」やコアCPIでは「前月比、前年比」ともに5月からは鈍化していると予想されています。市場予想通りだとすれば、インフレ率の伸びは鈍化するものの、依然としてFRBの目標値からは遠く、この結果を持って7月の利上げが見送られる材料にはなり得ないと思われます。引き続き市場は9月以降も追加利上げの可能性があるのかどうかを探る動きになろうかと思います。

7月のFOMC会合は25−26日に開催されることから来週からは「ブラックアウト」期間に入ります。そのせいか、今週はFOMCメンバーの発言機会が沢山あります。現時点でのメンバーの立ち位置は、アトランタ連銀のボスティック総裁が明らかに「ハト派」で、シカゴ連銀のグールズビー総裁はニュ―トラルと見られますが、その他パウエル議長を始め残りの多くのメンバーは追加利上げが必要との立場で「タカ派」です。これらのメンバーは「好調な雇用が賃金上昇をサポートし、それが消費者の購買意欲を支える」といった構図が継続されていると見ており、FRBにとってはある意味好ましくない状況が続いています。逆に言えば、好調な雇用が崩れた際にはインフレ率も大幅に鈍化する可能性があると見ています。FOMCに続く27−28日には日銀政策決定会合もあります。政策変更はないと予想されていましたが、ここにきて「サプライズ」の政策修正も、可能性は低いものの、「ノーマーク」という訳にはいかなくなったように思います。6月28日に行われたECB主催のフォーラムで、植田日銀総裁はこれまでの金融緩和継続の意思は見せながらも言い回しが微妙になってきたように思います。また先週の内田副総裁の発言も同様に微妙な言い回しだったと受け止めました。もともと、植田総裁は「金融政策の修正にはサプライズは避けられない」といった発言も行っていました。BNPパリバ証券は「7月にもYCCが修正されるのではないかとの観測が高まっており、今週の5年債、20年債入札に対して調整が要求されそうだ」と指摘しています。可能性は極めて低いものの、注意は必要です。個人的には、年内の修正もしくは変更はあると予想していますが、仮に7月会合でもないとすれば、年内の会合は残り3回になります。

今週の注目材料

  • 7/10(月)
    日 5月国際収支・貿易収支
    日 6月景気ウオッチャー調査
    中 中国6月消費者物価指数
    中 中国6月生産者物価指数
    英 英6月消費者物価指数
    英 ベイリー・BOE総裁講演
    米 5月消費者信用残高
    米 バー・FRB副議長、討論会に参加
    米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
    米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
    米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
    加 カナダ5月住宅建設許可件数
  • 7/11(火)
    豪 豪7月ウエストパック消費者信頼感指数
    豪 豪6月NAB企業景況感指数
    独 独6月消費者物価指数(改定値)
    独 独7月ZEW景気期待指数「
    欧 NATO首脳会議(リトアニア)、岸田首相も出席 
    英 英ILO失業率(5月)
    英 英6月失業率
  • 7/12(水)
    英 BOE、金融安定化報告・BOE総裁会見
    米 6月消費者物価指数
    米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
    米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
    米 ブレーナード米国家経済会議(NEC)委員長講演
    米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会に参加
    米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会に参加
    米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
    加 カナダ中銀政策金利発表
  • 7/13(木)
    中  中国 6月貿易収支
    欧  ユーロ圏5月鉱工業生産
    欧  日EU首脳協議(ブリュッセル)
    中東 OPEC月報
    英  英5月鉱工業生産
    英  英5月貿易収支
    米  新規失業保険申請件数
    米  6月生産者物価指数
    米  6月財政収支
  • 7/14(金)
    日 5月鉱工業生産(確定値)
    印 G20財務相・中央銀行総裁会議(インド、ガンディーナガル、18日まで)
    欧 ユーロ圏5月貿易収支
    米 6月輸入物価指数
    米 6月輸出物価指数
    米 7月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
    米 企業決算 → ウェルズ・ファーゴ、JPモルガン、シティーグループ、ブラックロック
  • 7/15(土)
  • 7/16(日)
 
※尚、このサイトは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的とするものではございません。投資の最終判断はご自身でなさるようお願い致します。本サイトの情報により皆様に生じたいかなる損害については弊社及び執筆者には一切の責任を負いかねます。

外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。

・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。

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外為オンラインのシニアアナリスト 
佐藤正和

邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。