米1月のCPIとPPIが揃って市場予想を超えたことで、FRBの基本的な利下げスタンスは変わらないまでも、短期的には「利上げも考えないわけにはいかない状況」になってきたようです。タカ派の論客であるサマーズ元財務長官などは「その確率は15%程度だろう」と話しています。一方で、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁などは、「物価の安定は視野に入っている」とある程度の自信を示すとともに、「まだやるべき仕事がある」と慎重な姿勢を崩してはいません。雇用統計の結果を受けドルが買われ、さらに上記CPI、PPIがさらにドルを押し上げ、ドル円は昨年末の水準である141円からおよそ9円程ドル高が進みました。
一方株価の方も上昇基調を強め、ダウ、ナスダック指数、さらにS&P500は揃って「史上最高値」を更新中です。米ゴールドマンは16日の顧客向けのリポートで、S&P500は今年末までに「5200」まで上昇すると、2024年度目標設定からわずか数カ月で2度目の予想引き上げを行いました。先週末の同指数の引け値が「5005」でしたが、ここからさらに3.9%上昇することを意味します。しかし、日本株はそんなものではありません。先週末には史上最高値である「3万8915円」に、あとわずか50円で届くといった上昇を見せ、34年ぶりとなる最高値更新も、「最早、時間の問題」という状況です。NISAによる買いだけではなく、外国人投資家も「日本株を持たないリスク」を意識し始め、積極的に日本株を買っているとの報道です。ただ外に目を向ければ、ロシアによるウクライナ侵攻はまもなく2年になりますが、一向に戦闘が終わる気配はなく、さらイスラエルはハマスだけではなく、ヒズボラとも戦闘を開始しています。中東情勢はこれまでになく緊張が高まっていると言えます。
さらに今年は11月に米大統領選が控えており、こちらも市場にとって大きなリスクであると言えます。市場は「もしトラ」から「ほぼトラ」と、トランプ氏がバイデン氏を破り、再選するとのシナリオを描くと同時に、そのリスクに備える準備をしています。スキャンダルにまみれ、NY州地裁からは不当利益に対して巨額の罰金判決を受けているトランプ氏。米国民は一体何を考えているのか、筆者などは理解に苦しみます。バイデン氏にしても、イスラエル問題への対応で支持率を下げましたが、高齢で果たしてさらに4年間も持つのか心配です。両者に唯一共通していることは、どちらが大統領になっても「あと4年」だということです。米国憲法では、大統領の任期は原則「2期8年」までと定められています。そう考えると、米国民は「4年間の我慢」と割り切っているのでしょうか。ただこれからの4年間は、これまでの4年間とは異なります。世界大戦の危機もあり軍事力、経済力で圧倒的に世界一の米国は、日本を含む多くの国々にとっても非常に重要で、その4年間を担うという意味では、誰が米国の大統領になるのかによって、政治、外交、軍事が想定外の方向に進む可能性もあります。米国民は楽観的すぎるのではないか、気になるところです。
今週は順調に低下してきた米インフレが反騰し始めており、それを巡るFOMCメンバーの発言がある程度相場を動かす力になろうかと思います。24日(土)には、対立候補ヘイリー氏が地盤とするサウスカロライナ州予備選がり、こちらにも注目です。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。