日本の金融当局者による、政策変更のタイミングを巡る発言で上下に振らされているドル円ですが、それでも週明け月曜日は150円を挟む展開で、執筆時には150円15−20銭前後で推移しています。個人的には高田審議委員の発言が日本のインフレを取り巻く状況を適切に表現しており、植田総裁など、日銀執行部は前のめりになる市場をけん制する意味で、慎重な言い回しをしているのではないかと考えています。先週発表された1月の消費者物価指数(CPI)は、総合で「2.2%」、コアCPIも「2.0%」と、こちらは22カ月連続で日銀目標を上回る状況が続いています。マイナス金利解除など、日銀の現行政策の修正は4月25−26日の会合で決定されるといった予想は維持したいと思います。
本日の「アナリストレポート」でも触れましたが、ドル円はやや材料難の状態が続いており、148円台半ばから150円台後半の大枠レンジをどちらも抜け切れない状況です。特に、150円80−95銭では「壁」ができつつあり、ここが抜けるかどうかが、今後の相場を予想する上では重要になっています。もし抜けるようなら、何度も上値を抑えられていただけに、一気に151円台に乗せる可能性もあると予想しています。「壁」の外側にはストップロスのドル買いも控えていると思われるからです。一方ここを抜けずにズルズルと売られ、上記148円台半ばを下抜けするようだと、もう一段ドル安が進む可能性もありそうです。
今週は相場を動かす材料が控えています。6日(水)には、半期に一度の金融政策報告に関するパウエル議長の議会証言があります。ここで議長が利下げに関してどのような発言を行うのかが注目されます。議長を初めFRB高官のほぼ全員が「利下げ開始時期の決定には忍耐強く臨める」との見解を示しており、「利下げを急がない姿勢」を強調することも予想されます。1月のCPI、PPIはともに市場予想を上回り、PEC個人消費データも予想通りでしたが、依然として高水準でした。インフレが落ち着いてきたことは確認できるものの、今一歩下がり切れないインフレの現状を「まだやるべき仕事は残っている」と、アトランタ連銀のボスティック総裁はこのように表現していました。
8日(金)には毎月恒例の雇用統計が発表されます。2月の雇用統計では失業率が「3.7%」(前月は3.7%)、非農業部門雇用者数は「20万人の増加」(前月は35万3000人)と予想され、相変わらず好調な内容が見込まれています。引き続き労働市場と個人消費は好調さを維持していることから、インフレの再燃も考えられ、利下げを急がないスタンスは正当化されると思われます。今週はこの2つの材料が相場を動かすのではないかと予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。