ドル円は先月20日に151円81銭まで上昇して以来、151円70銭を越えるのは今日(8日)までで10回ほどあります。そして全ては151円台後半で押し戻される展開が続いています。かといってドル売りが進むわけではないものの、151円台後半では「介入警戒感」が相当強く、152円台までドルを買い上げる「勇気」はないようです。確かに、政府日銀の実弾介入の可能性は非常に高く、この水準からドルを買って、介入に遭遇しようものなら、5〜6円程度のマイナスを覚悟しなければならず、なかなか152円台までドル買いで攻めるのは厳しいものがあります。しかし、それでもドルは底堅い動きを見せています。FRBの利下げ観測が徐々に後退し、実際に米長期金利はその見方に呼応するかのように、4.1〜4.4%の高水準を維持しており、ドルをサポートする格好になっています。
筆者の経験で言えば、市場介入でトレンドが変わったことはなく、あくまでも短期的な水準訂正に終わる可能性が高いと思います。ただそれでも力ずくで水準を押し下げる介入には相当な注意を払わなければなりません。ここでは、ドルロングは早めの決済と、介入があった場合に備えてポジションを軽くしておくこと。さらには現水準から5〜6円下の水準でドル買いの「指し値」をしておくことでしょうか。
今週の材料は言うまでもなく、10日(水)の米3月の消費者物価指数(CIP)と、翌日11日(木)の生産者物価指数(PPI)です。前回2月には、両指数が上振れしていたことをきっかけに、利下げ観測が急速に後退し、年内の利下げ回数も4−5回の予想から3回に減少し、これがドルを押し上げた直接の要因でした。足元ではさら米利下げ開始のタイミングは後ずれし、同時にFOMCメンバーの認識も「年内の利下げ回数は1回が適切になる可能性が高い」といった発言を引き出し、さらにはミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「インフレの横ばい推移が続くようであれば、利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じる」と述べ、年内の利下げは必要なくなる可能性があるといった「超タカ派」の意見も飛び出しています。
現時点の予想は3月CPIのうち、変動幅の大きい食料とエネルギーを除く「コア指数」が、前月比「0.3%」の上昇と見込まれており、総合指数も同様な伸びが予想されています。ブルームバーグのエコノミストは、「総合指数の伸びが年末まで3.0%前後で浮上したとしても、コア指数の持続的なディスインフレにより、米金融当局は今夏に利下げをすることが可能となるだろう」と分析しています。利下げを来年まで先延ばしするような事態にはほとんどならないと予想しているようです。また今週はECB(欧州中銀)とBOE(イングランド銀行)も政策金利の発表が予定されています。ECBがFRBよりも早く利下げに踏み切ると見られていますが、今回の会合では見送られる公算が高いと見ています。先進国ではスイス中銀が先陣を切って利下げを実施しましたが、まだ他の中銀は慎重な対応を見せているところです。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。