先週のドル円は157円台を回復し、157円19銭まで上昇する場面がありました。これで今回の下落幅の「64%」を回復したことになります。先週は円金利が上昇し、アベノミクス以来12年ぶりとなる1%を記録し、週明け27日(月)には1.023%と、さらに上昇しています。円金利の上昇は、本来なら日米金利差の縮小につながり「円高材料」のはずですが、それほど円が買われる状況にはなっていません。本コメント執筆時には、156円66銭までドルが売られ、やや円高に振れてはいますが、円を買う動きは鈍いように見受けられます。円金利が上昇しても限定的であり、日米金利差は極端には縮小しないという見方に支えられているようです。
27日の午前中には、日銀の内田副総裁の講演があり、円安圧力が続く中注目を集めていました。内田氏は、「3月に短期政策金利の操作を通じて2%の物価安定目標を目指し伝統的な金融政策の枠組みに戻ったことは、ゼロ金利政策を克服したことを意味する」と述べ、「インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っているが、デフレとゼロ金利解除との闘いの終焉は視野に入った」と語っていました。この様な発言も、やや円買いを促したようです。
パウエル議長が何度も口にしているように、米利下げ開始のタイミングは「今後のデータ次第」ですが、ここ1、2カ月の数字を見ると「強弱まちまち」と言うのが正直な感想です。4月は総じて強めの数字が出たことで利下げ観測が一気に後退し、「追加利上げ」という言葉まで飛び出すような状況でした。しかし5月に入ると、月初の雇用統計を皮切りに弱い数字が出て来たことで、まだ年内利下げの可能性が残っていると言えます。まさに「今後のデータ次第だ」というところです。米ゴールドマンは、これまで利下げ開始は7月としていたものを、9月へと見通しを変えています。「9月利下げ開始」予想が現時点でのコンセンサスというところです。
今週31日(金)には、為替介入の実績が公表されます。すでに円資金の推移から「介入があった」ことは事実として捉えられており、あまり意味のないことにはなりますが、それでも「介入についてはノーコメント」と繰り返してきた神田財務官が、円安がさらに進んだ場合、今度はどのような発言に変わるのか興味はあります。また、31日には4月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表されます。今月最後の重要なインフレ指標です。3月では市場予想を上回り、物価上昇圧力が依然として強いことが確認されましたが、今回はどうでしょうか。
今週はより介入が実施された160円に近づくことから、これまでのように順調にドルが上昇していくとは思えません。やや上昇にブレイキがかかる予想しますが、もちろんこれも数字次第です。ただ、その数字への感応度は下値のリスクの方が高いと予想します。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。