ドル円は先週末の日銀決定会合後に、158円25銭までドル高が進み、4月末から5月の連休に掛けて政府日銀が大規模介入で151円台後半まで水準を下げてからの「戻り高値」を記録しました。何度も指摘しているように、ファンダメンタルズでは強弱まちまちの結果が示されながらも弱い数字が目立っている足許の状況ですが、テクニカルでは、多少ドルが下落する場面はあるものの、ドル高傾向の変化は見られない展開が続いています。大規模介入で下げた値幅の「76.4%戻し」にあたる157円80銭も上抜けし、テクニカルで言えば、「再度160円を試す可能性が高い」ということになります。市場のセンチメントが変わらない上、市場参加者のスタンスも「ドルが下がったら買いたい」とする、依然として「ドルブル」です。先週のFOMCドットプロットで、「年内の利下げ回数は1回」であることが示され、弱めの数字が出ているにもかかわらず、FRBのタカ派的な姿勢がそれらの数字を吸収している格好です。ただそれでも158円から上方では介入実施は難しい状況ではあるものの、警戒は必要かと思います。
今週は日米の金融会合を終え、やや材料不足の感は否めませんが、18日(火)の[5月の小売売上高]には注目する必要がありますが、それ以外は住宅関連指標が多く、それほど影響はないものと思われます。そうなると、注意したいのはFOMCメンバーの発言です。メンバーの年末の金利水準予側にはばらつきがあります。それもそのはず、今年の後半でインフレが再び加速するのかあるいは、足許の鈍化傾向が定着するのかどうかで、利下げ回数は異なり市場で取引される金利も大きく動きます。今回のドットプロットでは、中心が「年内の利下げ回数は1回」でしたが、「2回の利下げ」を予想するメンバーは8人と最大でした。一方「年内利下げはゼロ」を予想したメンバーも4人いました。データ次第であることに変わりはありませんが、消費者物価指数と生産者物価指数が直近2カ月鈍化していることを考えると、もう少し「ハト派的」発言が増えてもいいような気がします。
現時点では日足のトレンドラインが極めて有効に機能しており、上方トレンドに変化はありませんが、このラインも徐々に水準を切り上げており、現水準から2円程下落すればこのラインを割り込む可能性があります。また、そのすぐ下には一目均衡表の雲もありますが、その雲も水準を徐々に切り上げています。つまり、比較的大きな下落があれば、いずれも下抜けする可能性があるということです。「再度160円を見ないと収まらない相場」かもしれませんが、注意深く見る必要があります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。