4月に大規模な円買いドル売り介入を行い、それでも歯止めのかからない円売りに対しても「投機的な動きには適切に対応する」と繰り返し述べてきたことで名を馳せた財務省の神田財務官が退任し、後任に三村国際局長が起用される人事が先週発表されました。神田氏は2021年7月に為替担当トップの財務官に就任しましたが、この時のドル円相場は110円台でした。それから3年、ドル円は神田財務官の口先介入や実弾介入にもかかわらず、先週末の東京市場では161円台に乗せ、161円27銭まで円安が進みました。この間の円の下落率は46%にも及び、まさに在任期間中は円安一辺倒だったことになります。いやはや、巡り合わせとは言え大変な時期に「財務官」に就任したものです。ここは心から「お疲れ様でした」と、ねぎらいの言葉を贈りたいと思います。
11月の米大統領選に向けて、第1回のテレビ討論会ではバイデン氏が年齢の限界を露呈し、トランプ氏の圧勝に終わりました。この後も第2回テレビ討論会は9月10日に開催される予定ですが、その前に民主党、共和党はそれぞれ党大会で正式に大統領候補者を決定します。特に注目されるのが、8月19−22日に行われる民主党の「全国大会」です。ここでバイデン氏以外の候補者が擁立されるのかどうかが焦点の一つになりますが、現時点ではバイデン氏は大統領選に向けて候補者から降りる考えはないようです。民主党内にはバイデン氏に替わる有力な候補者がいないことも事実ですが、仮にバイデン氏以外で闘うとしても、当のバイデン氏に候補者から降りるよう説得するのは簡単ではないようです。結局、側近中の側近である「ジル夫人」が説得し、その結果自身から辞退の申し出がない限り難しいようです。
そうなると、事態は俄然トランプ氏に有利かと思われます。「もしトラ」どころか、「ほぼトラ」も想定しなければならない状況が、いずれ来る可能性が高いのではないでしょうか。
足元では米国のインフレがこの先鈍化するのか、あるいは再燃するのかでFRBの利下げのタイミングが決定され、それによってドル円も大きく変動すると思われます。そしてその不確実性は9月のFOMCまで続く可能性もあります。そうなると、さらに材料として「トランプ再選後の動き」も考慮する必要が出てきます。トランプ氏は、中国からの全輸入品に60%の関税を掛けると豪語していることを考えると、基本的にはインフレの再燃から米金利が上昇することを材料に、ドル高が進むと考えられますが、トランプ氏は以前、「34年ぶりのドル高は米国にとって大惨事だ」と述べたこともあり、ドル高に振れると考えるのは早計かもしれません。2016年に大統領に就任してからは、その言動に振り回され、多くの側近をクビにした「暴挙」は記憶に新しいところです。いずれにしても、今後は為替の先々の動きが読みづらくなる可能性が高いと思われます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。