「今日のアナリストレポート」でも書きましたが、ドル安、株安の流れが止まりません。前場の引けにかけて一旦は収まりそうな気配を見せましたが、午後12時半に東京株式市の後場が始まると、ドル円は直ぐに144円60銭前後まで売られ、午前中に付けてドルの安値更新する動きを見せました。その後の動きはコメントのしようがないほど下げがきつく成っています。今や、ドル円と株価が極めて連動した動きになっています。今回の「暴落」に近いドル円と株価の動きは、先週31日の日銀による利上げが主因であることは間違いありません。「円安の影響が基調的な物価上昇に影響を与えるようなら、利上げも辞さない」と述べ、これまで為替相場から距離を置いてきた総裁も、政治的圧力を配慮したのか、スタンスを変えてきました。ここまで急速に円高と株安が進むと、秋以降の日本の景気が急速に減速する可能性が出てきます。
「政府・与党から日銀に円安への対応を求める発言が相次いだ。岸田首相は7月19日に『金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする』と述べ、さらに、河野デジタル相や自民党茂木幹事長からも利上げを求める発言が続いた。この圧力に屈した可能性がある。」と、武者リサーチが指摘しているように、秋の政局に向けての配慮もあったようです。ドル円は既に161円95銭の高値を付けてから、わずか1カ月の間に20円に迫る値幅の下落を見せています。今日の午後の動きを見ていると、ドル円も株価も「パニック売り」の様相を呈しています。リスク回避の流れがさらに高まっていることから安全資産の債券には買いが集まり、日本の10年債は0.76%台まで金利が低下し、また日本時間にもかかわらず、米国債先物取引では、取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が発動されています。日米債券が急速に買われ、とりわけ米国の金利が低下していることでドル売りが加速し、それがまた債券買いに向かわせるという「負のスパイラル」に陥っています。このような想定を超える相場の急変は、ほぼ下げる場合で、上げ相場でこのような動きを経験した記憶はありません。「今回の動きは、これまでとは違う」・・・。このような言葉も何度か耳にしましたが、今回はさらに深刻な下げに見舞われています。次のターゲットは「140円」ということになりますが、早ければ今夜のNYででもありそうな気配です。「真夏の夜の悪夢」はまだ続くのかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。