先週前半はドル円と日経平均株価が急落し、歴史的な週となりました。特に日経平均株価は5日(月)に4551円も下げ、急落というよりも「暴落」といった表現が適切な動きでした。1987年のブラックマンデー時の下げを上回る大幅な下げに見舞われ、今年新たに「NISA」を始められた個人投資家はほぼ全員「含み損」を抱えることになったと思われます。原因はその前の週に、日銀が金融決定会合で、国債の買い入れ額の減額に加え、想定外の利上げを決めたことでした。利上げ幅はわずか「25bp」でしたが、日本の景気を取り巻く環境を考えたら、利上げは9月以降と予想していた投資家にとっては「青天の霹靂」とも言える決定で、これが円買いとリスク資産である株式の大幅下落を誘った格好です。ドル円が160円を超えた際にも株価が下落したことがありましたが、その時のコメントに「円安が進んだことを嫌気した下落」といった論評もありましたが、個人的には違和感が残りました。日本株は明らかに「円高への抵抗力が弱い」ことが再度確認された形です。もっとも、その前に世界最大の株式市場である「NY株式市場」の影響をもろに受ける、脆弱な市場であることは事実です。
ドル円も日経平均株価もその後、内田日銀副総裁が講演で、「市場が不安定な状況で利上げすることはない」と、景気動向にも影響を与える足元の急激な混乱に配慮した発言を行った事で値を戻し、株価に至っては一転して「過去最大の上げ幅」を記録するなど、極めて変動の大きな動きになっています。ドル円もその後買戻しが入り、12日(月)のNY市場では148円台前半まで買い戻される場面もありました。結局上へ下へと大きく乱高下する動きはやや治まったようですが、現在も不安定さは続いています。これは、米景気の先行きに不透明感が強く、「正直予想出来ない」というのが投資家の本音といったところで、相場の値動きを増幅させています。
利上げに踏み切った日銀ですが、今後も連続して利上げを実施する可能性は低いと見ています。一つは自民党総裁選との兼ね合いです。自民党総裁選はまだ日程が確定していませんが、党の規約では9月20日から29日までの間に議員投票が実施されることとなっています。9月の日銀決定会合は19−20日に開催され、次期総裁の決まる前には実施しにくいと思われます。もちろん、新総裁は自動的に次期首相になるわけですから、10月会合(30−31日)でも、利上げは実施しにくいことに変わりはありません。次回の利上げがあるとすれば12月会合かと考えています。一方米国では、急速に景気後退が懸念され早期の利下げ、それも大幅な利下げが必要との見方が急速に高まっていますが、今夜(13日)の生産者物価指数(PPI)と、明日の消費者物価指数(CPI)の結果次第では、まだ不確実性が残っていると思われます。今月22−24日のジャクソンホールでのパウエル議長の講演が、一つのヒントを与えてくれると予想しています。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。