今年7月には162円近辺までドル高が進んだドル円が、141円台まで急落したきっかけとなったのは8月2日に発表された「7月の雇用統計」でした。そして、ちょうど1カ月後の「8月の雇用統計」を受けて、一旦は149円台まで反発したドル円が再び141円台まで売られ、ほぼ同水準までドルが下落して来ました。今のところ、141円70−80銭のレベルでは2回下落が止められていると見ることも出来ますが、来週のFOMC会合での利下げ幅次第では同水準を抜け、140円割れを試す展開がないとも言えません。「8月の非農業部門雇用者数」が14.2万人と発表され、同時に6月分、7月分も合わせて下方修正されたことで、よりトレンドが確認され易い「3カ月平均」では「12.2万人」と、今年1−3月の平均である「27.8万人」からは大きく減少しました。どうやら労働市場の減速は最早、疑いのないところのようです。
ただ、予想されていた下振れとはいえ、雇用統計を受けた後の債券市場の見方は、依然として25bpの利下げが主流で、50bpの利下げ観測は思ったほど盛り上がっていません。FRBのウォラー理事は、今回の結果を受けて、「現在入手可能な一連のデータは最早、辛抱強さを求めるものではなく、行動を必要とする内容だ」と指摘し、その上で「この3日間で得られたデータは、労働市場が引き続き軟化しているが悪化はしていないことを示している。この判断は次のFOMC会合で重要なものになる。一連の引き下げが適切になるが、引き下げの規模やペースについてはオープンマインドだ」と述べ、大幅な利下げを支持する考えを示しています。
週明けの日本株は一時1100円を超える下げを見せる場面もありました。先週末のNYで、ダウやナスダック指数が大きく売られたことと、円高が急速に進んだことが、日本株の下落につながっていますが、今日マイナスで取引を終えればこれで5日続落ということになります。株価の下落は、ドルが売られ円高方向に振れ易いことから、今後この日米株価がどこで下げ止まるのかも、焦点の一つになります。少なくとも米国では今後確実に金利が下がることから、金利面だけを考えればここからさらに大きく米国株が売られるリスクは低いと予想していますが、どうでしょう。
今週は11日(水)に発表される「8月の消費者物価指数(CPI)」が注目されます。市場の関心の中心が「インフレ」から「雇用」にシフトしてはいますが、それでも仮にCPIが予想を大きく上回るようなことになれば、「あれっ」ということになり、再びインフレにも注意が向き、ドル円も下げ止まる可能性があるかもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。