依然としてドルの上値は重い展開が続いている中、16日(月)は東京市場が祝日のため休場であったこともあり、150円、145円の節目を下抜けして来たドル円は、ついに140円台も抜いて来ました。139円58銭まで売られ、2023年7月以来となるドル安水準を記録しました。今年7月に記録した161円95円の高値からわずか2カ月半で、実に22円以上(13.8%)のドル安が進んだことになります。かなりのスピードでドルが売られたことが分かります。一時は25bpで固まりつつあった今週19日のFOMC会合での利下げ幅が、急速に50bpへと利下げ観測が修正されたことでドル売りが活発になりました。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が、FRB内部で50bpの利下げが検討されているといった情報や、ダドリー前NY連銀総裁が、50bpが適切と述べていることが50pb利下げ観測を再燃させた格好です。米債券市場でもこの観測を織り込む動きが強まり、16日時点では50bpの利下げが優勢となっています。筆者は「まだ五分五分」と見ていますが、先のジャクソンホールでの講演でパウエル議長は「労働市場の一段の冷え込みは歓迎しない」と発言していたこともあり、労働市場の減速が明確になったことを考慮すれば、50bpの利下げの可能性も十分あり得ます。ただ一方で市場はいつものように突っ込み過ぎており、「織り込み過ぎ」との声も増えてきています。
140円を一旦割り込んだドル円ですが、この先どこまで下げるのか予想もつきにくい状況です。個人的には135−140円のどこかでは下げ止まると予想したいところですが、正直まだ分かりません。一応フィボナッチ・リトリースメントを用いて確認してみると、今回のドルの上昇が2023年1月6日の「127円22銭」から始まったとすれば、上昇幅は34円73銭となり、上昇幅の「61.8%」が「140円49銭」になり、これは既に下抜けしていることから次の「76.4%」が、「135円42銭」と導き出されます。また上昇に転じた起点を2021年1月4日に置けば、上昇幅は「59円36銭」となり、こちらは「50%」の半値戻しが「139円27銭」と計算できます。現状では上記「139円27銭」が一つの目安とも見られますが、いずれにしても今回も含めて年内3回の会合でどの程度の幅で利下げを実行するのかが注目されます。今週の会合で一気に50bp引き下げ、市場に金融当局の積極的な利下げスタンスを明確に印象付け、後はデータを見ながら調整していくのか、あるいは25bpにとどめて置いて、次回からは大胆なスタンスで臨むといった戦略を取るのか、今週には結果が出ます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。