先週、東京市場が祝日の16日(月)にドル円は140円を割込み、139円58銭までドル安が進みました。それから1週間、植田日銀総裁の「ハト派寄り」の発言を受けて20日には144円50銭までドルが反発し、これで約5円も戻ったことになります。FOMC会合と日銀政策決定会合という、日米の金融政策会合を終えて、米国では今後も利下げを行って行くものの、そのペースは思ったほど急激なものではないことが、パウエル議長の発言から示唆された一方、粛々と利上げを行う予定の日銀も、先週の植田総裁の発言では「時間的な余裕はある」とのこと。日米金利差縮小観測にややブレイキがかかった印象です。もっとも、両トップとも「今後のデータ次第」であることに変わりはないところです。
今後のデータでは、やはり「労働市場の動向」が最も注目され、さらに結果次第では最も相場を動かす要因になろうかと思います。米インフレは既に峠を越え、減速傾向であることは明らかです。年初の勢いからすれば、ここ数カ月の雇用の伸びは確かに米景気の足を引っ張る弱さが出ていますが、それでも「巡航速度」をやや下回る水準です。今後雇用がやや回復し巡航速度に戻れば、金融引き締め策から「緩和」へと舵を切り直したとはいえ、そのスピードと引き下げ幅は限定的となる可能性もあります。さらにもう一つの材料は、日米のトップに誰がなるのかという点です。米大統領選は多くの報道が伝えるように、ハリス氏とトランプ氏の支持率は拮抗しており、現時点ではほぼ互角と言えます。どちらが勝利するのかで為替への影響も異なりそうですが、現時点ではトランプ氏が再選したらドル高に振れる可能性が高いとみられています。
一方、「今日のアナリストレポート」でも触れましたが、今週金曜日には判明する自民党の総裁選の行方も思った以上に材料視され、その結果が注目されているようです。高市氏は23日のインターネットの番組で、「金利を今、上げるのはあほやと思う」と述べており、同氏が勝利した場合、金融・為替へのインパクトが他の候補者よりも大きいといった記事は増えて来ました。石破氏と小泉氏は日銀の独立性を堅持するとの考えで一致しています。野村証券のサーベイでは、高市氏勝利では株高、石破氏勝利では金利上昇と円高を見込む向きが多く、市場への影響は大きく異なるとされています。昨日、立憲民主党の代表が野田氏に決まりました。短期間だったとはいえ、野田氏は首相経験者です。政策も貫禄も、高市氏や小泉氏とでは「勝負あり」といったところで、石破氏で互角といった状況のように思えます。その石破氏、実は野田氏とはかなり仲がいいことが、ある雑誌の対談で判明しました。バイデン氏と岸田氏が退任し、新しい日米関係を誰と誰がけん引していくのか、こちらの視点からも興味が沸いてきます。
今後もまだ円高方向に振れる可能性が高いと思われますが、再び140円台を割り込むのかどうか。上値は145円台を超えれば、異なる展開も望めるような気もします。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。