先週末、ドル円は重要な節目である150円台まで上昇しました。さすがに先週末の東京時間ではドルの上値は重く、149円台後半まで押し戻されましたが、その後のNYでは149円30銭台までドルが売られています。米大統領選でもしトランプ氏が勝利したら、インフレが加速しドル高に振れるというのが、現時点での共通した見方のようですが、その動きを反映するかのように、通貨オプション市場ではドル高に備える動きがあることがうかがえます。ドル高が進めば利益を得ることが出来る、ドルを買う権利の「コールオプション」が増えており、ドルを売る権利であるプットとコールとのボラティリティー差を反映する「リスクリバーサル」が上昇していることが見て取れます。足元では、デルタ25%の1ヵ月物の「リスクリバーサル」は−0.85近辺で取引されており、およそ1カ月ぶりに高い水準にあります。通常ドルが安定した動きの際には「−1〜−2」程度で推移するため、市場参加者がドル高を意識し、ドル高に備えていることが理解できます。
この動きはシカゴ先物市場における円のポジションでも確認できます。ドル円が140円を割り込み、139円58銭まで売られた9月16日には、円買いの枚数は約15万枚まで積み上がり、過去最高水準にまで膨らんでいましたが、先週15日時点では2529枚まで急速に減少しています。投機筋が円を売り戻し、ドルを買ったことが、ドル円を150円台に押し上げた原動力の一つになっていたことが分かります。ドル円は150円台半ばまで上昇しましたが、その後達成感もあり149円台前半まで押し戻されてはいますが、この先まださらに上昇するのか、あるいは145円台まで押し戻されるのか、ここからが正念場となります。今朝の「アナリストレポート」でも触れましたが、利下げに向って金融政策を調整する過程にいるFRBと、全く逆に利上げの過程にいる日銀が、それぞれどの程度政策を推し進められるのかにかかっています。さらに先行きの予想を不透明にしているのが、今度の日曜日の「衆院選挙」と11月5日の「米大統領選」の行方です。「衆院選」ではすでに自民党の過半数割れの可能性があることが報じられていますが、連立政権が崩れる可能性は極めて低いとみられます。ないとは思いますが、自公が過半数を割るようだと、政治の混乱と景気対策の遅れから株価が大きく下げ、ドル円も売られる可能性があると予想していますが、どうでしょう。逆に自民が惨敗して連立政権が維持されれば、為替に大きな影響はないと考えます。「米大統領選」は残すところあと2週間です。直近のデータでは、全米の支持率ではハリス氏がトランプ氏をややリードしているようでが、激戦7州ではトランプ氏が再びリードしているようです。ただ、いずれもリードはわずかで、誤差の範囲内でしかありません。このままでは、どちらが勝利しても稀に見る僅差の可能性があり、それは裏を返せば「米国の分断が深まっている」ことにつながります。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。