多くの重要イベントが控えている今年の晩秋ですが、先週は「日銀金融政策決定会合」と「10月の米雇用統計」を無事に終えました。値動きはそこそこありましたが、151円台後半から153円台後半で推移し、概ね152円台での取引に終始しました。重要なイベントであったのは事実でしたが、今年度最大のイベントである「2024年米大統領選」を前にその影響は限定的で、やはり米大統領が正式に決まるまでは、経済政策、外交、とりわけ中国に対する米国の対応が不透明なことで、身動きが取れないといったところです。その米大統領選は日本時間今夜から始まりますが、直近の調査でも両者の支持率は拮抗しており、予断を許さない状況です。
ハリス氏よりもトランプ氏が勝利した場合の方が、よりインフレ率が高まるというのが一般的な見方ですが、いずれの候補が勝利を収めるとしても、現在の米経済は驚くほど底堅い状態を維持していると見られます。一部のエコノミストは、「減税や輸入関税賦課を柱とするトランプ氏の提案が実行されれば、ハリス氏の計画よりも大幅な連邦債務残高の増加とインフレ加速につながる恐れがあると予想する」と述べています。トランプ氏は支持者を集めた直近の集会でも、「私が再選したら、ウクライナ問題は1カ月で解決し、インフレも1カ月で解消できる。ジョー(バイデン大統領)やカマラ(ハリス副大統領)には出来ないだろう」と、相変わらず大風呂敷を広げています。危惧するのは、仮にトランプ氏が敗北した場合、2020年のように、選挙の無効を言い出しかねないということです。すでにその兆候はあります。昨日発表されたアイオワ州の直近の支持率では、ハリス氏がトランプ氏を「3ポイント」リードしていると伝えられたことに対して、トランプ氏と共和党はこの調査結果を異常値だとして批難しています。トランプ氏の熱烈な支持者にも同様の傾向が見られ、2020年の大統領選後、多くのトランプ支持者がワシントンの国会議事堂に雪崩れ込んだことは記憶に新しいところです。その場合、米国の分断がさらに加速されることになる可能性が高いとみられます。
今週は7日にFOMC会合の結果が公表されますが、上記大統領選が希に見る大接戦のため、結果発表時にはまだどちらが大統領に勝利するのか判明していない可能性があります。どちらが勝つとしても、現時点では先週末の雇用統計の下振れを考慮しても、「25bpの利下げ」が有力だと考えています。従って、FOMC会合そのものは材料にはなりにくいと思われ、やはり焦点は大統領選の行方ということになります。アイオワ州でトランプ氏がハリス氏にリードを許しているという情報が出たことで、ドルが売られたことを考えると、仮にハリス氏が勝利した場合、どこまで行くは別にして、ドル安円高が進むと思われます。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。