ドル円は、ここ10日間ほどおおむね153円〜156円のレンジ内の動きが続いています。先週末のNY市場でも、11月のPMIが市場予想を上回り、特にサービス業PMIは「58.0」と、2022年3月以来となる高水準でした。「既往のドル高、大統領選にともなう政策不透明感などから製造業の景況感が停滞するのをよそに、サービス業はAI関連需要、堅調な個人消費を背景に景況感が上向いている」(第一生命経済研究所:主席エコノミスト藤代宏一氏)米景気の底堅さを受け、NY株式市場ではダウが400ドルを超える大幅高となり、10日ぶりに最高値を更新し、低迷する日本株とは対照的な動きを見せています。このところ定着しつつある、「株高=円安ドル高」の動きからドル円は155円台に乗せる場面もありました。
ところが、週開け早々から一転してドルが売られる展開になっています。トランプ次期大統領が人選に苦慮していた財務長官に、マイクロヘッジファンド運営会社キー・スクエア・グループのスコット・ベッセントCEOを指名したことがドル下落の引き金になっています。同氏はドル安を志向していると見られ、緊縮財政にも言及しており、トランプ氏の政策が実行されたら金利高、株高に振れるとの観測にややブレイキがかかっています。米フォーブス誌よれば、ベッセント氏は、「1991年から2000年にかけてジョージ・ソロス氏のもとで働き、退社時にはそこで欧州部門のトップを務めていた。その後、2011年に再びソロス・ファンドに戻り、2015年にかけて最高投資責任者を務め、再び退社してキー・スクエアを創業するためにソロス氏から20億ドル(約3074億円)の出資を受けている。ただ、同氏は、数年前からソロス氏とは会話していない」と紹介しています。また「同氏はトランプ氏の経済政策に関する主要アドバイザーでもあり、今年の大統領選ではトランプ氏と共和党の活動に約300万ドル(約4億6400万円)の政治献金を行っている」とも指摘しています。結局、多額の資金援助を行ったイーロンマスク氏同様、自身の大統領再選に功績のあった人物を登用しているにすぎません。今後、政策遂行のためには財政規律など気にしないとみられるトランプ氏と、ベッセント氏がどこまで歩調を合わせて進むことが出来るのか見たいと思います。第一次トランプ政権ではかなりの側近が更迭されたことが、記憶に残っています。
ドル円はベッセント氏の財務長官への指名を受けて一時は153円55銭前後までドル売りが進みましたが、その後日経平均株価の大幅高から154円30銭台まで戻すなど、すでに荒っぽい動きを見せています。今週は153〜156円のレンジをどちらかに切れるのか注目したいと思います。材料は27日(水)に発表される「10月の個人消費支出指数(PCE)」になります。市場予想では、堅調な家計支出と安定した所得の伸びを背景に、根強いインフレ圧力を示す内容を予想しています。テクニカルではドル高傾向に大きな崩れは見当たりませんが、日足の「MACD」では153円台までドル安が進んだことを受け、マックDとシグナルとの差である「ヒストグラム」がマイナス圏に入り、下方に拡大しているのがやや気になります。この指標はかなり早い段階で方向性を示すことが多いことから、一応注意が必要かもしれません。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。