植田日銀総裁が、日経新聞とのインタビューで、為替がさらに円安に進むようなら、金融調節を行うこととなり、早期の追加利上げの可能性にも言及したことで円買いが加速し、先週末のNYでは一時149円47銭までドルが売られました。米長期金利も大きく低下し、ドル下落に拍車がかかりましたが、今朝のコメントでも指摘したように、日足の「雲の上限」でピタリと下落は止められています。今朝の東京時間ではドル買い意欲も根強く、ドル円は150円台を回復し、150円74銭辺りまで反発しています。今朝のコメントでも触れましたが、ドル円は今後のトレンドを予想する上でも微妙な値位置まで下げてきました。比較的早期の動きを示唆するテクニカルでは、トレンドが転換する予兆を見せてはいますが、まだ完成には時間がかかりそうです。水準で言えば、147円台半ばを明確に割り込めばひと先ずは「ドル高トレンドの終焉」と見ていいかと考えています。多くの市場参加者が同じテクニカルを見ていることから、そのテクニカルがドル高の転換を示せば、かなりの市場参加者が同じ方向に舵を切り直すことで、そのテクニカル指標が、より「正しいもの」として信奉者を増やし、それがまたトレンドを形成するといった好循環を繰り返すことになります。
日銀が金融の正常化を目指していることは間違いのないところで、物価・経済見通しが予想通りであれば、追加利上げを行うタイミングを模索しています。従って、2025年には政策金利は1.0〜1.25%程度まで引き上げられるものと予想しています。一方FRBは、緩やかな利下げを継続するのが適切だとしながらも、トランプ次期政権ではインフレが再燃する可能性が高く、また未だに当局の目標である2%の物価上昇率には至っていないことから、インフレに対する警戒感を解いてはいません。あくまでも今後の経済データ次第を基本としながらも、FOMCメンバー内でも見方が分かれているのが実情です。今後のFRBの政策スタンスを予想する上では、今週4日(水)に行われる、NYタイムズ主催の討論会でのパウエル議長の発言が注目されます。議長は先月14日の講演で、「経済は、利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない。労働市場の状況は概ね均衡し、インフレ期待もかなり安定する中で、インフレ率は時に起伏のある道をたどりながらも、2%の目標に向かって引き続き低下していくと予想している。また、経済データが許せば、利下げをゆっくり進めるのが賢明だろう」と発言し、「利下げは急がない」との認識を示していました。この認識が維持されているのかどうか、注目されます。また、6日には今年最後の「雇用統計」が発表されます。10月の雇用統計では、ハリケーンや大規模なストの影響で雇用者数の伸びが極端に抑制され、サプライズの「1.2万人」でしたが、11月のそれはすでに「20万人」と、巡航速度に戻ると予想されています。もし予想通りであれば、パウエル議長が言うように労働市場に関しては、「利下げを急ぐ必要性についていかなるシグナルも発していない」ということになり、ドルがこの水準からさらに大きく売られることはないと考えますが、どうでしょう。
外為オンラインのシニアアナリスト 佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算20年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
外為オンラインのシニアアナリスト
佐藤正和
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。
インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。
通算30年以上、為替の世界に携わっている。
・ラジオNIKKEI「株式完全実況解説!株チャン↑」出演中。
・STOCKVOICE TV「くりっく365マーケット情報」出演中。
・Yahoo!ファイナンスに相場情報を定期配信中。
・書籍「チャートがしっかり読めるようになるFX入門」(翔泳社)著書。